「選択的夫婦別姓」について本社が先月下旬、インターネットを使って読者に尋ねたアンケートでは、別姓を認める回答が7割を超えた半面で、男女の意識差が浮き彫りになった。結婚により姓を変えているのは96%が女性のため、女性からの深刻な体験談が多く寄せられた。
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富山県の女性(54)は、別姓制度の導入を願いつつ三十年間通称を使ってきた。「違和感があり、自分ではない感覚があるから」。石川県の女性(56)は「結婚したときに結婚前の人生全体を否定された気分になった」と、数十年たっても不満を抱えていた。婿養子になり、姓を変えた石川県の男性(56)も「旧姓時代に積み上げてきたものが、ことごとく消えてしまったように感じる」とした。
結婚で姓を変える選択をしたら、「保険や通帳の姓を変更するのが面倒だった。国家資格の免許書き換えも迫られた」=愛知県、女性(45)、「離婚で再び姓が変わったので、本来離婚を報告する必要のない間柄の人にまで知られてしまった」=大阪府、女性(45)=と、生活上の不便を回答した。
アンケートでは、別姓を容認する男性も六割を超えた。静岡県の男性(74)は「より対等に相互を認め合える」、愛知県の男性(61)は「私は自分の姓を名乗りたい。ならば妻も思いは同じはず」と答えた。
制度がなかなか変わらない背景について、「一番の問題は、同姓で当たり前という固定観念だ」と、静岡県の女性(50)は推測。愛知県の女性(49)は「政治家は姓を変えない男性が多い。当事者の痛みが分からない」と主張する。
事実婚だったが、第二子の出産を機に婚姻届を出した東京都の女性(34)は「自己の一部分である姓を変えなければいけない苦痛は表現しようがない」と吐露。仕事を続ける上で旧姓を使うが、「アイデンティティーを喪失してしまう人にとって、同姓を強制するのは人権問題。選択的夫婦別姓制度は誰の権利も侵害しない」と、別姓の導入を待ち望む。
一方、別姓の導入に反対する人たちからは、「日本の伝統が崩れる」=愛知県、男性(73)、「名前を変えることで結婚の意識が高まる」=滋賀県、男性(56)、「それなりの覚悟で他人から夫婦になるのだから、結婚したら同じ姓になりたい」=三重県、女性(24)=との意見が相次いだ。
別姓にした場合に、子どもの姓やお墓はどうなるのか心配する声がある。三重県の女性(67)は「きょうだいの姓が異なる可能性があり、混乱する」と懸念。静岡県の事実婚の女性(44)は「私が入る予定の墓には、祖先から私まで四つの名字が並ぶことになるが、お寺からは何の問題もないと言われている」と書いた。
「戸籍は同姓にし、旧姓使用を広く認めればよい。ミドルネームも一つの方法」=愛知県、男性(50)、「二人の姓から一文字ずつ取って、二人とも新しい姓にすることも認めればよい」=静岡県、男性(45)=といった提案もあった。
*意見は、本紙読者らへのアンケートで集めた。「結婚するときに、二人ともが元の名字を使い続けることも、夫婦のどちらかが名字を変えて一つの名字にすることもできる選択的夫婦別姓をどう思うか」を11月27~29日に尋ね、10~90代の男女7940人(男性5253人、女性2683人、未入力4人)から回答があった。
ソース
東京新聞:夫婦別姓 多数容認 本紙アンケート7940人回答:暮らし(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/