韓国では今年、“地獄朝鮮(ヘル朝鮮)”という言葉が大流行した。意味は字面の通り。
韓国人が、自分たちの国を「まるで“地獄(Hell)”のようだ」と風刺した言葉である。
もともとこの言葉は、2012年頃にインターネット上に登場した新造語なのだが、若者やSNS上で流行するだけにとどまらず、
最近ではメディアや文化人が頻繁に取り上げる言葉になった。
ネット上には「hellkorea.com」「hellkorea.net」など、自国の惨状を赤裸々に議論する掲示板サイトも乱立し始めている。
またヘル朝鮮という切り口から社会問題に触れた書籍『ヘル朝鮮にハンマーを投げつけろ!』や『Hell 朝鮮? Heal朝鮮!』なども発売されている。
今年9月にはビッグデータ分析会社・ダウムソフトが、“ヘル朝鮮”というキーワードがネット上でどれくらい使われているか調査している。
それによると、2014年には5,277件だったが、15年には9月の時点ですでに10万1,700件まで爆発的に増えていたそうだ。
ここ数年、日本では嫌韓現象が巻き起こり、何かと問題視されていたが、その当の韓国では今年、自国民による“韓国叩き”が、かなりの勢いで広がったことになる。
12月1日には、全国紙であるハンギョレ新聞が「大韓民国が“ヘル朝鮮”である60の理由をお知らせします」というタイトルで記事を掲載。
Twitter上に公開された60枚の写真を紹介した。
それらの写真は、韓国の社会問題を取り上げたニュース番組の放送画面をキャプチャーしたものだった。
中身を見てみると、ヘル朝鮮と揶揄される理由が、これでもかと掲げられている。
「出生率、世界最下位圏」「韓国児童、学業ストレス世界最高」「引退後(老後)の生活、自信感“最下位”」
「後進国病“結核”、韓国OECD中1位」「医療費増加率、OECD中1位」「会社員の有給消化率、世界25カ国中最下位」
「児童福祉支出、OECD中最下位」「児童性犯罪、半分が執行猶予」「貧富の格差最大……OECD中老人貧困率1位」
また、ポータルサイト「DCインサイド」の辞書コンテンツ「DCwiki」には、韓国をヘル朝鮮と呼ぶ理由の要約が、掲載されている。
「平凡に生きたいという欲を持ってはいけない国」
「義務は山のように多いのに、権利はほとんどない国」
「社会のすべての問題が、自分自身の気の持ちようにかかっているとされる国」
「3流の仮説であるトリクルダウン効果を、国家最高の大学教授たちが15年間も定説のように信じ切っている国」
「社会の矛盾を指摘すると、共産主義者・敗北者の烙印を押される国」
「痛みが、若者の青春になる国」
「右翼と左翼の区別は難しいのに、上下の階級の区別ははっきりしている国」
かなり辛らつな批判の数々だが、これらはほんの一部にすぎない。言葉が独り歩きする現状に、警鐘を鳴らす識者、文化人が増えている。
韓国のリーダー・朴槿恵大統領でさえ、このヘル朝鮮という言葉に代表される国民の悲観論に危機感を抱いているようだ。
9月に大統領府で行われた主席秘書官会議の席では「行き過ぎた悲観と批判を脱し、
経済体質を変えて第2の跳躍を実現しなければならない」と発言していることからも、そのことがうかがえる。
ヘル朝鮮という言葉はただの流行語なのか、それとも社会に見捨てられていると感じる国民の悲愴な嘆きなのか――。
ひとつの言葉がここまで市民権を得ている現状を見るに、後者であるような気がしてならない。
http://www.cyzo.com/2015/12/post_25326.html
韓国社会を揶揄したヘル朝鮮地図(「DCイン