前「ニューヨーク・タイムズ」東京支局長、マーティン・ファクラー氏が、安倍政権を牛耳っていると言われる「ジャパン・ハンドラーズ」の正体を暴く!
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─11月3日、秋の叙勲でアメリカのラムズフェルド元国防長官とアーミテージ元国務副長官に旭日大綬章が授与されることが発表されました。
どちらも現在のオバマ政権とは関係のない人物。なぜ、いま彼らに勲章を贈ったのでしょう?
ファクラー 逆に、こちらが訊きたいですよ。ラムズフェルドはジョージ・W・ブッシュ政権で国防長官を務め、アフガニスタン侵攻、
イラク戦争に踏み切って中東の泥沼にアメリカを巻き込んだ張本人。
今でもアメリカ国内では、彼の名前を聞いただけでブーイングする人も少なくない。
叙勲というのは、どこが決めているのですか? 現在の天皇陛下はとてもリベラルな方だと思います。彼が自発的にラムズフェルドに勲章を贈るとは考えられない。
─叙勲を決めるのは内閣府の賞勲局です。ただし、今回のラムズフェルド、アーミテージに関しては外務省の儀典官室から強い推薦があったと言われています。
ファクラー なるほど、やはり安倍政権の考え方はネオコン(新保守主義)に近いということですね。
特にラムズフェルドはイラク戦争でアメリカの一国大国主義、つまり軍事力を使って民主主義を拡げるという誤った戦略を立案した中心人物で、
まさにアメリカの力を誇示したいと考えるネオコンの代表格と言っていいでしょう。
しかし、ふたりとも明らかに共和党寄りなので、現在の民主党・オバマ政権とは関わりのない人物。
彼らに勲章を贈っても、安倍政権とオバマ政権の関係に好影響を与えることは考えられません。
では、なぜ? 実は、永田町の政治家たちと話していると「共和党のほうが親日的だ」という考えを持っている人が多いことに驚かされます。
私に言わせれば、この考えはハッキリ言って間違い。共和党だから親日、ということはありません。
─アーミテージは、いわゆる「ジャパン・ハンドラーズ」ですね。日本と太いパイプを持ち、自分たちの要求に日本を従わせることのできる存在と言われています。
実際に、安倍政権が集団的自衛権の行使を認めた背景には、日米同盟における日本の役割の拡大を求めた2012年の「第3次アーミテージ・レポート」があると見られている。
ファクラー 確かに、ジャパン・ハンドラーズという存在は圧倒的に共和党に多く、民主党にはごく少数しかいません。
もしかしたら、ハンドラーズの要求に応えれば褒(ほ)めてもらえるので「共和党は親日的」と考える政治家が多いのかもしれませんね。
しかし、ハンドラーズはアメリカの官僚機構、エリート層のごく一部に過ぎません。彼らとだけ親密になることは、日米関係全体を見れば、決して日本の国益にはつながらない。
日本はアメリカとの関係構築において、いくつかの根本的間違いを犯しています。
ハンドラーズを重用し過ぎるのもその一例だし、アメリカの議会との関係が弱いのも大きな問題です。
(略)
http://wpb.shueisha.co.jp/2015/11/19/56920/