カメラを使わなくても、壁の向こう側に誰が居るのかを、こちら側から知ることができる技術が開発されていた。
開発したのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)のコンピューター科学と人工知能研究室(CSAIL)の合同チームだ。彼らが壁を透視するために使ったのは、Wi-Fiなどの電波だった。
この技術は『RF Capture』と呼ばれるもので、壁越しに反射された無線を捉えて人の状態を知ることができる。
『RF Capture』は、11月2日(展示会は3日から)から神戸で開催される『シーグラフアジア』でも紹介されるようだ。
■ 無線で透視するという技術
『RF Capture』はどのようにして壁を透視しているのだろうか。
まず、『RF Capture』の装置は、無線信号を発する。そして反射された無線信号から、人の形状を検出するという。
勿論、反射された信号には様々なノイズが入っているが、それらを取り除くアルゴリズムがあるらしい。
検出した形状が分析されると、手足の長さなど体型を区別できるという。そのデータが『silhouette fingerprints』(指紋シルエット)として、誰であるかを特定することに使われるのだ。
この、壁の向こう側にいる人が誰であるのかを識別す能力は高い。
15人を対象にテストしたところ、約90%の精度で区別できたという。
また、『RF Capture』の透視能力は高く、壁の向こうにいる人が指で空中に描いた線ですら捉えることもできる。
この技術を使えば、例えば建物の反対側から、あなたの居場所や動き、そしてあなたが誰なのかを確定できるというのだ。
■ 応用範囲は広い
『RF Capture』の応用技術は広いと考えられている。例えば映画の制作時間を短縮することから、高齢者の介護といった分野までだ。
例えば映画では、モーション・キャプチャを使ったCGを制作する機会が増えている。
しかし、モーション・キャプチャでは、演技をする俳優の体中にマーカーを付け、カメラだらけの部屋で演技をしなければならない。
だが、こちらの『RF Capture』を応用すれば、マーカーなど一切付けずに俳優の動きを捉えることができる。しかもセットや壁などの障害物があっても追跡できるのだ。
それでは、高齢者介護の分野では、どのように応用できるのだろうか。
それは、家庭内や施設内で暮らしている人のモニタリングだ。これはカメラでも開発が進められているが、カメラによる映像ではプライバシーが丸裸にされてしまう。
しかし『RF Capture』によるモニタリングであれば、例えば服装(下着姿や裸など)が外部に漏れることはないし、顔の状態までわからないからすっぴんでも安心だ。
ところが人の動きは呼吸の為の胸の動きまで捉えることができるため、もしも意識不明に陥って倒れたりすれば、自動的に通報するシステムに応用することが可能だ。
カメラによる映像解析技術も急速に進化しているが、カメラはそこに持ち込まねばならないことや、何もかも見えてしまうと言う欠点がある。
一方、『RF Capture』であれば、例えば災害でビルに閉じ込められた人が居るかどうかを外側から確認できる様になるかもしれない。
このような透視技術の進化の可能性は大きいだろう。
http://news.infoseek.co.jp/article/futurus_122235/
http://news.mit.edu/2015/wireless-x-ray-vision-could-power-virtual-reality-smart-homes-hollywood-1028
https://www.youtube.com/watch?v=7LTr02cJkiA