前略
―なぜ、ボランティアで働かなくてはならないのか。
メリットがないものに国は予算をつけない。高齢化が進展する日本では、介護士の育成は急務であるのは周知の通り。だが、ここにも予算がついていない。介護士育成に予算がつかないのに、なぜIT産業のエンジニア育成に予算をつけなくてはならないのか。
それならば、1カ月間、国のサイバーディフェンスのために、ボランティアで働いてもらうことで恩返しをするというのがひとつの提案だ。
2020年の東京五輪に役立つエンジニアたちは当然、五輪後もあらゆる企業で戦力として活用される人材になる。2020年をゴールに考えたものではなく、その先の時代に向けた人材育成という観点で議論していく必要がある。
――ボランティア以外の選択肢はないのか。
国からIT人材育成のための予算を取るひとつの手段がボランティアであるが、当然、ほかにも考え得ることはあるだろう。
ただ、ボランティアといっても、いくつかの手法がある。
先に触れたように、国の予算で育ててもらったことに対して、1カ月間のボランティア活動で恩返しをするというのもひとつの方法。あるいは、企業が給与を支払いながら、一定期間ボランティアを働くということも考えられる。
ネットワーク関連のイベントとして最大規模を誇る「Interop Tokyo」では、業界関係者や学生がボランティアでイベントの設営に当たってきたという経緯がある。
このイベントでは、かつての日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA、現在のCSAJの前身)に加盟するソフトウェア企業のエンジニアたち、
WIDEプロジェクトに関連する学生たちが手弁当でNOC(ネットワークオペレーションセンター)を設置、運営するといったことも行ってきた。
その中で光ケーブルの敷設作業や融着作業を学んだり、米国人エンジニアから最新技術を学んだりといったこともできた。
なかには、こうしたボランティア活動を通じて資格を取得したり、技術認定を受けたりといったこともあった。当時は大学生だったボランティアで勉強していた人が今では教える側に立っているケースもある。
ボランティア活動をしながら、学んだり実践したりといったことができる場でもあった。
東京五輪に向けて、エンジニアがボランティアで参加するという取り組みについても、同様の成果を期待できるのではないだろうか。
ボランティアそのものが問題ではなくて、人材が不足しているということが問題であることに気が付いてほしい。
われわれがやらなくてはならないのは、エンジニアの底上げであり、企業で戦力となるエンジニアの育成。そのための手法を考えていく必要がある。
http://japan.zdnet.com/article/35071996/
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