プリンストン大学のアンガス・ディートンがノーベル賞を受賞した。
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海外援助についてディートンは以下のように述べている。
残念ながら、世界の富裕国は現在事態を悪化させている。海外援助、すなわち富裕国から貧困国への移転は、その名誉のために言っておくならばとくに医療については大きな役割を果たしており、それがなければ死んでいたであろう多くの人を生かしている。しかし、海外援助は地元政府の能力発展を損なってもいる。
このことは、政府が直接に援助を受取り、援助金額が財政支出に占める割合が大きい国-そのほとんどがアフリカ-において特に顕著だ。このような政府は市民との契約、議会、徴税システムといったものを必要としない。それら政府が誰かに対して説明責任を負うとするならば、それは援助国に対してだ。しかし実際においてはそれすらうまくいかない。なぜなら、(貧しい人々を助けたいと望んでいる)自国民からの圧力を受ける援助国は、貧困国政府が必要とするだけ、もしくはそれ以上のお金を与える必要があるからだ。
政府を経由せずに直接貧しい人々に援助を与えるのはどうだろうか。確かに、その即座の効果としては良くなることが多い。特に政府間支援が貧しい人々にほとんど届かないような国においてはそうだ。さらにそれに必要となる金額は驚くほど小さい。全ての人を少なくとも1日1ドルの貧困線以上に押し上げるのに必要なのは、富裕国の大人一人あたり一日約15セントだ。
しかしこれは何の解決にもならない。貧しい人々には生活の改善をもたらしてくれる政府が必要なのだ。政府を蚊帳の外に置くことは短期的には物事を改善するかもしれないが、根本的な問題を未解決のまま取り残すことになる。貧困国は外国よる医療サービスを未来永劫保持し続けることは出来ない。援助は貧しい人々に最も必要なもの、すなわち今日も明日も自分たちと協力しあう効果的な政府を弱体化させることになるのだ。
私たちにできるのは、貧困国が貧しくあることをやめるのを困難にするこのようなことを止めるよう自分たちの政府に求めることだ。援助の削減もその一つだが、武器取引、富裕国の貿易及び補助金政策の改善、援助に関わらない技術アドバイスの提供、豊かな人々には縁のない病気の新薬開発といったことも含まれる。既に弱い政府を更に弱くすることで貧しい人々を救うことなど出来ないのだ。
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