日本人のノーベル賞受賞決定が続く中、九日発表のノーベル平和賞では海外の研究者らから、戦争放棄を掲げた憲法九条を守る活動を続ける市民団体「九条の会」や「憲法九条を保持している日本国民」を受賞候補に推す声が出るなど、再び九条が脚光を浴びている。ただ国内に目を転じると、「No.9(憲法九条)」と書かれた小さなタグや缶バッジをつけた市民が国会本館や議員会館に入ろうとすると、警備員らに制止される例が相次ぐ。市民や有識者から「国が憲法を守るのは当たり前なのにおかしい」と疑問の声が上がる。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201510/images/PK2015100702100139_size0.jpg
「悪いことをするために来ているんじゃない。正規の手続きを取っているのに、おかしい」。原発再稼働や安全保障関連法に反対する市民運動などで国会によく来る川崎市宮前区の加藤恵子さん(69)は憤る。
七日午前十時半ごろ、沖縄県名護市辺野古(へのこ)の新基地建設に反対する院内集会に参加するため参院議員会館を訪れたが、手荷物検査を受ける際に制止された。バッグで揺れる「No.9」のタグ(縦九・五センチ×横六センチ)を「示威行為に当たるので外すか隠してほしい」と求められ、しぶしぶ応じた。「中に入らないと用事ができないので従うしかない。でも、こんなに小さいのに」
八月に衆院第二議員会館を訪れた際は、建物の入り口で止められた。このとき、警備員が根拠に挙げたのは、入り口の立て看板にある「禁止事項」。はちまきやゼッケン等の着用、のぼり、プラカード、拡声器等の持ち込みを禁じており、「等」にタグやバッジが含まれるというのだ。「脱原発」「戦争反対」など「政治的なメッセージがあるもの」は「すべてご遠慮をお願いしている」という。
衆院事務局によると本館と議員会館では根拠が異なる。本館は国会法の「議員以外の者が議院内で秩序を乱した時には外に退去させることができる」との規定が根拠。議員会館は「議員でつくる委員会が決めた禁止事項に基づき、主義主張が異なる個人の間などでの口論などトラブルを防止するセキュリティー確保の観点からご協力をいただいている」という。
日弁連憲法問題対策本部副本部長の伊藤真弁護士は、国会議員や公務員には憲法九九条で憲法尊重擁護義務が課されていることを挙げ「国が憲法を守らなければならないのは当たり前。国民には守らせる責任がある」と指摘。「そもそもこんな小さなタグが議院の秩序を乱すわけがない。表現の自由は最大限認められるべきだ」とも訴える。
ノルウェー・ノーベル委員会に対し、今年のノーベル平和賞候補として「憲法九条を保持している日本国民」を推薦した上智大の石川旺(さかえ)名誉教授(メディア論)は「バッジなどを持つのは、国民が憲法を守ろうという意思表示なのに、それを駄目だというのか。憲法が保障する権利は、国民が不断の努力で保持しなければいけないと一二条にも書いてあるのに論理的に支離滅裂だ」と批判する。
ソース
東京新聞:9条タグ着用 国会、議員会館への入館×:政治(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201510/CK2015100702000263.html