アザラシ観察所、漁業者に配慮し開設せず 稚内・抜海漁港
10/06 20:18
【稚内】市や稚内観光協会が市内の抜海漁港に毎冬設けている「ゴマフアザラシ観察所」が今季、開設されないことが決まった。アザラシによる漁業被害が深刻化し、行政が駆除を本格化する中、観光客の安全や地元漁業者に配慮した格好だ。アザラシ観察所は稚内の冬季観光の目玉で影響も懸念されるが、稚内観光協会は「観光よりも地元の1次産業を優先したい。旧瀬戸邸など他の施設の魅力を売り出していきたい」としている。
抜海漁港は埠頭(ふとう)から肉眼でアザラシの群れが見られると話題になり、市や同協会が2003年から、暖房やトイレを備えた観察所を主に11~3月に開設。旅行会社が冬のツアーに組み込み、ピークの07年には約1万2千人、ここ数年も毎冬3千~9千人前後が訪れる人気のスポットだった。
ただ、定置網のサケやタコなどを食い荒らすアザラシ被害が問題化し、地元のタコ漁が休止に追い込まれたこともある。漁業者は観光振興を考慮し、観察所開設に協力しながらも「見せ物にすると、アザラシの有害性が見過ごされてしまうので、できればない方がいい」などの声も出ていた。
昨年12月からは市や稚内漁協が銃を使用した追い払いを初めて実施。道も本年度から、捕獲などによる個体数削減を掲げたアザラシ管理計画を進め、駆除に向けた取り組みが本格化しており、観光客の安全性も考慮した結果、開設を見送ることにした。来季以降の開設も難しいとみられる。
同協会は「暴風雪の日に埠頭近くまで行く観光客もいて危険な面もあった」と説明。昨年初めて冬季開放した歴史的建造物・旧瀬戸邸の入場者が4千人以上になるなど好評だった点を挙げ、「観察所中止はツアー会社も了承しており、冬の観光に大きな影響はないと思う」としている。(佐々木馨斗)
(画像)抜海漁港の消波ブロック上で休息するゴマフアザラシの群れ。観察所は冬季観光の目玉だったが、今季は開設しないことになった=1月
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ソース
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/area/dohoku/1-0187738.html