同じく独自案作成の中心人物である今井氏も、幹事長辞任問題について「安保法制の審議が山場の時にいかがなものか」と疑問視。結局、「党のルール違反をしたわけではない。辞任する必要はない」(松野代表)とする党執行部の意向は固く、「幹事長ポストを奪取して修正協議で安倍政権と妥協する」というシナリオが実現することはなかった。
一連の経過を辿ると、8月29日の橋下氏の新党結成宣言は、「官邸別動隊」「第二自民党(与党補完勢力)」と呼ぶのがぴったりの大阪系がその本性を露呈したものといえる。
本来なら橋下最高顧問は安保法制の参院審議が山場を迎える中で、「与党は維新独自案を丸呑みすべき。違憲法案を強行採決なら安倍政権を打倒する」と執行部を後押しするのが本来の役割であるはずなのに、実際には天下分け目の決戦を前に“御家騒動”を引き起こし、安倍政権から法案根幹部分の修正(違憲法案を合憲法案に変更)を勝ち取ろうとする執行部の足を引っ張った。
「国民の奴隷ではない」(大阪都構想投開票日の会見)と断言した橋下氏だが、「安倍政権の“下僕”(補完勢力)にはなる」と勘繰られても仕方がないだろう。
既に維新の非大阪組の間では分裂を見越した動きも始まっていた。8月24日の区市町村議員団研修会では、すでに橋下氏と袂を分かち、「フォーラム4」を設立した元経産官僚の古賀茂明氏が講演。「『改革はしないが戦争はする自民党』と対決するには、『改革はするが戦争はしない』という第四象限(フォーラム4)の政党が不可欠。維新も民主もこの立場の政党になるといい」「リベラルな政策をはっきりと訴えるといい」と助言した。「安倍政権と対決するのか接近するのか分からない曖昧政党から脱却すれば、非自民党の受け皿になる」という考え方である。