パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区でイスラエルによる入植が拡大していることはよく伝えられる。だが入植者たちの中にアメリカ人が相当数いることはあまり知られていないだろう。最新の調査で、その割合が15%であることが分かった。
英オックスフォード大学の講師サラ・ヤエル・ハーシュホーンによれば、西岸には約40万人の入植者が住んでいるが、このうち6万人ほどがユダヤ系アメリカ人だという。西岸に暮らすアメリカ国籍の住人の数は、これまで知られていなかった。
その数は「入植者人口における割合としても、イスラエルに移住したユダヤ系アメリカ人の割合としても際立って多い」と、ハーシュホーンはエルサレムで開催された会議で指摘した。
これまでの統計がないために、この6万人という数字が以前と比べて目立って多いのか少ないのかは分からない。それでも、93年にオスロ合意が結ばれた頃に11万人前後だった入植者数が、今では264%増の約40万人に達していることははっきりしている。
大統領選候補も西岸を訪問
イスラエルの市民団体ピース・ナウは、今回明らかになった数字によって西岸の入植活動はイスラエル・パレスチナ間だけでなく「国際的な問題」だと指摘した。「オバマ政権は入植の拡大について反対を唱えているが、残念ながら約6万人のアメリカ人が2国家共存という和平案への妨げとなっている」と、ピース・ナウのアナット・ベン・ナンは言う。
アメリカのキリスト教徒の保守派の一部は、入植地の学校やシナゴーグ(ユダヤ教会堂)などに寄付することによって、入植活動を支援している。しかも、こうした寄付による税控除という甘い汁も吸っている。
06年には、テキサス州サンアントニオのキリスト教福音派の牧師ジョン・ヘイギーが、イスラエルを支持するのは「神の外交政策」だからだと主張した。
来年の米大統領選の候補者たちも、親イスラエルをアピールして選挙資金の調達につなげるために西岸を訪問している。共和党の指名候補に名乗りを上げているマイク・ハッカビー元アーカンソー州知事(福音派)は、先月中旬に入植地を訪れた。
学歴の高いリベラル派も
しかしハーシュホーンによれば、イスラエルに移住するアメリカ人の多くが右翼的あるいはユダヤ教超正統派の思想を持っていると思われているが、現実はそうではないという。
「彼らは若くて学歴が高い。アメリカ人入植者のうち約10%が博士号を取得している。保守的ではあるが、必ずしも正統派の宗教観を持っているわけではない」と、彼女はイスラエルのハーレツ紙に語った。「中には60~70年代のアメリカで左派の社会主義運動に積極的に加わり、選挙では民主党に投票していた人たちもいる」
ハーシュホーンは10年に及んだ研究の結果、典型的なアメリカ人入植者とは、「若く聡明で、理想に燃えるリベラル派だ。彼らはシオニストであり、自分の価値観や経験をイスラエルの入植活動に生かしたいという意欲のもとに移住してきた」と語る。
米国務省は公式には、入植活動は国際法に違反しているとの立場を取っている。つまり、アメリカ人の入植も不法行為というわけだ。入植地の拡大を非難するオバマ政権のお膝元からシオニストが西岸へ向かっているようでは、元も子もない。
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