〈無法です無茶です無理です無謀です〉――。戦争法案が参院特別委員会で強行採決された翌18日、朝日新聞の川柳欄に掲載された一句だ。
ここ数日、違憲法案を数の力で押し切り、平和憲法を破壊する安倍政権の暴挙に国民の怒りは頂点に達した。成立阻止に野党も「あらゆる手段を講じる」(民主党・岡田代表)と息巻いていたのに、最終局面を迎えた18日に腰砕け。空前の国民の後押しをムダにしたのだから、犯罪的ですらある。
特別委で採決が強行されて以降、5野党は参院本会議に問責決議案を連発。衆院にも内閣不信任決議案を提出し、“徹底抗戦”の構えを見せはしたが、当初予定していた岸田外相への問責は出さずじまい。
新国立競技場の白紙見直しで責任論が出ている下村文科相の問責も見送られた。
不信任案を出す直前、長時間の趣旨説明で議事進行を遅らせるフィリバスター戦術について、
民主党関係者は「戦後最長どころか、戦前の最長記録の4時間以上を目指す」と豪語した。
ところが、枝野幹事長の説明は1時間44分で終了。
本人は「単に長ければいいというわけではない」と変にカッコつける始末だ。
共産党もヒドイ。法案成立の前から、19日午後に党の最高決議機関で大半の国会議員が出席する「中央委員会総会」の緊急開催を決めた。
与党の暴走を抑制する“確かな野党”を標榜するなら、今こそ真価の見せどころなのに、なぜ法案成立が連休にもつれ込むような事態を想定しないのか。
そもそも「緊急開催」なら、成立後に告知したって誰も文句を言わない。
18日まで4日連続で、国会前デモに参加した政治学者の五十嵐仁氏が言う。
「連日の雨の中、声を張り上げ続けたデモ隊の熱気に比べると、野党は“死にもの狂い”で抵抗していない、と感じる人は多いでしょう。
ただ、会期末まで残り1週間もあり、与党は衆院再可決の『60日ルール』も使える。
恐らく野党も“物理的抵抗には限界がある”と判断せざるを得なかった。
逆に言えば、それだけ与党ペースで押し切られたということです」
村山元首相は「与党が法案を強行に成立させるならば、野党全員が議員辞職を」と呼びかけていたが、国民に覚悟を示す手段はいくらでもあった。
15日の中央公聴会で「シールズ」の奥田愛基氏は「この法案に関する野党の方々の態度も見ている。
本当にできることはすべてやったのだろうか」と訴えたが、「やれることはやり尽くした」と胸を張れる議員はどれだけいるのか。
憲法の破壊後に「もっと抵抗していれば」と悔やんでも、後の祭りだ。
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