<市場は利上げ見送り織り込む>
エコノミストにとって、予想が当たるのかどうかは、自らの評判にかかわる問題。さらに、自己資金やクライアントの資金を運用する投資家やファンドマネジャーにとっては、まさに死活問題と言えるだろう。
メルク・インベストメンツのアクセル・メルク最高投資責任者(CIO)は「ジャーナリストやエコノミストならば、状況が変われば自分の話を変えればよい。バイサイドのわれわれに逃げ道はない」と話す。
予想が当たるファンドには顧客が集まり、手数料収入の増加や利益の拡大につながる。一方、予想が外れれば、顧客は他のファンドに逃げ出してしまう。メルク氏は自分の予想については明らかにしなかった。
16日の金融市場は、今週の利上げはない、との見方を織り込む展開となった。市場は、10月か12月の利上げを予想している。同じ金融機関のエコノミストの間でも、予想が割れているようだ。
ドイツ銀行では、ピーター・フーパー氏など複数のエコノミストが14日付で、「FRBが利上げすべき理由」というタイトルのリポートを発表した。しかし、同行で米国担当チーフエコノミストを務めるジョセフ・ラボーニャ氏は、このリポートにサインしなかった。
投資家は長年、FRBの考えや意図を見極めるため、アナリストや元FRBエコノミストに頼ってきた。ただ今では、元FRBエコノミストですらも、FRBの真意を読むのが難しくなっていると頭を抱える。
イエレンFRB議長の顧問だったアンドリュー・レビン氏は、FRBの戦略は「あまりにも不透明」になっているため、アナリストは推測するしかない、とのリポートを発表した。不確実性の高まりで、FRBが長年目指してきた透明性向上への努力が台無しになる可能性がある。
レビン氏自身は、利上げは「深刻な政策ミス」と指摘している。
実際、ウォールストリートでは、FRBの行動を予想するのではなく、FRBがどう行動すべきなのかに議論の軸足が移っているという。
JPモルガンのマイケル・フェロリ氏は「今週の利上げを予想するが、非常に微妙」とし「利上げが正しい判断だと確信する」と述べた。
一方、ゴールドマン・サックスのジャン・ハッチウス氏は、今週の利上げはないが、年内利上げを予想。ただ、インフレ率が低く、借り入れコストが最近上昇しているため、さらに先送りすべきと指摘した。