不正会計の東芝にアグレッシブな財務部長登場!
シニア記者もあぜん
大西 康之
2015年9月14日(月)
「2014年度決算は、もろもろございましたが、実質的な営業損益は増益であります」
「原子力事業の2014年度の売上高は6200億円で前年度比10%増。STP(東芝が約600億円を投融資したが、
パートナーが投資を凍結して宙に浮いている米国での原発建設プロジェクト)の減損がなかりせば増益です」
「電子デバイス部門も、減損処理がなかりせば、営業増益でありました」
謙虚にマイクを置いた室町社長の後に登場した渡辺幸一財務部長は、不正会計の責任を取って歴代3人の
社長が辞任したことも、当局から2カ月の猶予をもらって8月末に予定していた有価証券報告書の提出期限を
守れず今日が再延期の発表であることも、市場関係者の多くが「本当にこれで全部膿を出したのか」と疑って
いることも「お構いなし」で、攻めに攻めた。
何とアグレッシブな財務部長か。記者生活27年。雨の日も風の日も、照る日も曇る日も、四半期ごとにあまた
企業の決算発表を聞いてきたシニア記者だが、渡辺氏はその中で「モースト・アグレッシブ」な御仁である。
この活躍を読者にお伝えせねば、シニア記者の名が廃る。
「なかりせば」ってアナタ。その減損を「知らんぷり」してきたから、問題になっているんじゃないですか。5年
以上の長きわたり利益を水増ししてきた会社の財務部長が「なかりせば」って。
シニア記者があんぐりと口を開けているうちに、記者会見は質疑応答に移った。
記者A「新たな修正の中に入っているウエスチングハウス(東芝が買収した米原発機器大手=WH)の55億円
のコスト増ですが、これも不適切会計と考えてよいでしょうか」
室町社長「これは後発事象なので不適切ではないと思いますが、米子会社に対するトップのプレッシャーが
あったという意味では…」
ここで室町社長の回答にかぶせるように、渡辺財務部長がしゃべり始めた。
「これは判断の違いでありまして、従来は1台ごとの工事進行基準で計上していたものを10台まとめて評価
するという。グルーピングをしたときに判断の違いが出てくるという問題であり、まったくもって不適切とは言えない
グレーな状況と考えています」
自信満々で攻め続ける渡辺財務部長をあっけにとられた表情で見守る室町社長。質問は続く。
記者「室町社長は先週『期限の9月7日より前に(有価証券報告書を)提出したい』とおっしゃっていましたが、
結局、期限ぎりぎりになりました。理由を教えてください」
室町社長「できれば先週末に提出したいと思っていたのですが、予定通り進まず…」
再び渡辺財務部長が割って入る。
「税金資産だけをとってもこれだけの案件がありまして、ひとつひとつその税効果を確認したわけですが、
最後のところで再確認の必要が出て参りまして」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/280248/091100008/
(一部抜粋)