韓国の大手銀行「新韓銀行」(ソウル市)の株を保有する愛知県内の在日韓国人数人が、
海外財産の報告を怠るなどし、名古屋国税局から株の配当や譲渡所得、相続など約六億円の申告漏れを指摘されたことが分かった。
国内の大口株主が保有する同行の株資産は総額一千億円を超えるとみられるが、
大半が報告されていない可能性があり、税務当局は多額の申告漏れがあるとみて、全国的に調査を始めるもようだ。
日本の居住者は国籍を問わず、海外で得た所得も課税対象になる。
国税当局は昨年から、五千万円以上の海外財産を持つ人に、資産の種類や金額を記載する「国外財産調書」の提出を義務付けた。
ただ、調査権限が及ばない海外は所得者の自己申告に頼らざるを得ず、調書の未提出や記載漏れが多いとみられる。
今回は日韓の租税条約に基づいて提供された情報を端緒に、名古屋国税局が同行株の保有者を照合し、申告漏れが発覚したもようだ。
一度にこれほどの規模で、個人の海外財産が把握されたのは極めて異例。
関係者によると、愛知県内の株主が指摘を受けたのは、二〇一三年までの三年分。
韓国で一部課税された分を差し引いた税額と、過少申告加算税を含めた追徴課税は一億数千万円に上り、ほぼ全員が修正申告を済ませた。
指摘を受けた株主は、銀行設立当初からの出資者やその親族ら。
銀行の資産規模の拡大で保有株の価値が膨張したが、株の配当や譲渡などで多額の利益を得たり、株主が死亡し親族が株を相続したりした際、申告しなかったとされる 。
株主の一人は本紙の取材に「税務署の考えと異なることはあったが、過去にさかのぼって配当所得を申告して納めた」と話した。
<新韓銀行> 戦後に日本で起業し、成功するなどした在日韓国人341人が、在日企業の祖国進出を促すなどの目的で、1982年、資本金250億ウォン(当時の為替で約80億円)を出資して創設。
韓国初の民間設立銀行となった。
その後韓国の有力銀行と合併するなどし、新韓グループ全体の資産規模は国内4位に成長した。
近年は外国人株主が増え、在日韓国人の株保有率は2割を切っている 。
2015年9月11日 中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015091102000071.html