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3月18日に開かれた第4回公判では、A子さんの供述調書が読み上げられたが、冷酷とも言える内容に、傍聴席がざわつく場面があった。
〈実家にいるのが窮屈で逃げたかった。「結婚なんて紙っぺら一枚だ」と思い、深く考えなかった。だが、見込みが甘かった。
一騎は収入がなく、ケンカになった。猫を飼っていたが、あるときから夫もペットと同じと思えば腹が立たないようになってきた〉
〈一騎への思いは事件後も変わらないが、騒ぎになったので、せめて名字だけは変えたい。リセットして海外で美術の勉強をしてみたい〉
夫との結婚生活への未練がないことを示す証言。だが一方、小番氏からは、「事件の元凶」となった妻に対する恨み節は一度も出てこなかった。
取材の途中、「外に出たら最初に食べたかった」という小番氏のリクエストで、都内の味噌ラーメン屋へ向かった。
そこでA子さんの話題になると、仲睦まじかった頃を思い出したのか、ラーメンをすすりながら目を細めてこう語った。
「妻との出会いは東日本大震災のボランティア活動です。もっとも、被災地で恋愛関係に発展したわけではなく、東京に戻った後の飲み会からですが(笑)。
当時、僕は大学1年でした。
妻が世間からどう見られているか。それは理解しています。僕に同情する声もあることもわかっています。
妻抜きには語れない事件ですからね。でも……それでも僕は、妻を愛しています。
妻を許せるか? もちろん、人間としてどうにもならない感情はあります。(弁護士に対する)ジェラシーとかもありますし。
でも、あきらめるというか、受け入れるしかないですよね」
-A子さんとB氏の不倫関係が法廷で語られた際は、何を思ったのか。
「堂々としていようと思いました。凛としていようと。不必要に憔悴したような態度をとるのは違うのかなって。表情を変えないようにしようと、意識していました。
もちろん、完全に普通の不倫だったら許さないですし、一方的に離婚します。でも、今回の場合は、事情がわからないとしか言いようがないので……」
-「事情がわからない」とは、不倫関係ではなかったと思っているということか。
「公判で検察官が読み上げた妻の供述は、すべて裁判用というか。妻の真意からずれているような感じがしました。
あれだと、(妻が)冷たいと思われても仕方ない。やっぱり、調書は調書ということですよね」
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