タイの首都バンコクで起きた爆弾テロ事件で、警察は、タイからトルコへの不法な渡航を手助けするため偽造パスポートを扱っていたグループが以前、警察に摘発されたことへの報復として事件を起こした可能性があるとみて、29日逮捕した外国人の男を調べています。
バンコクで今月相次いだ爆弾テロ事件を捜査しているタイの警察は29日、バンコク郊外のアパートで、外国人の男を爆発物を持っていた疑いで逮捕しました。警察は30日から男の取り調べを本格化させていますが、今のところ、男の名前や国籍は判明せず、事件への関与についても供述していないということです。
警察の報道官は、この男のアパートからトルコの偽造パスポートが大量に見つかったとしたうえで、「偽造パスポートを扱うグループが以前、警察に摘発されたことに不満を持ち、犯行につながった可能性がある」との見方を示しました。
また、タイの現地メディアは、タイ政府が先月、中国から逃れてきたトルコと民族的に近いウイグル族を中国に強制送還したことへの報復ではないかという見方も伝えています。
警察は逮捕した男の事件への関与や、トルコの偽造パスポートをどのように使おうとしていたのかについて調べています。
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タイとウイグル族のつながりとは
ウイグル族の人たちの間では、新疆ウイグル自治区で中国政府が行っている抑圧的な民族政策から逃れ、タイを経由して、民族的に近いトルコに向かうケースが増えています。
ウイグル族を支援している団体によりますと、去年1年間だけでも、トルコに入国したウイグル族の人は数千人に上るということです。
こうしたなか、タイではウイグル族の人たちが不法滞在の疑いで拘束されるケースが相次ぎ、ことし3月には300人以上が拘束され、国際的な人権団体などが、「中国に送還されれば、さらに迫害を受けるおそれがある」と訴え、保護を求めていました。
しかし、タイ政府は先月、女性や子どもを含むおよそ100人を中国に強制送還しました。これに対して、トルコに亡命したウイグルの人たちが、タイや中国に抗議するデモを行い、イスタンブールにあるタイの名誉総領事館に侵入して窓ガラスを割るなど、反発が広がっていました。
ウイグルの問題に詳しい中央大学の水谷尚子非常勤講師は「ウイグル族の人たちは、トルコに入国するため、経由地のタイなど東南アジアでトルコの偽造パスポートを取得している。今回、逮捕された男がトルコの偽造パスポートを所持していたとすれば、ウイグルの可能性がある。今回の事件で、中国人観光客が多く集まる場所が狙われていることからも、強制送還に対する報復的な犯行ではないか」と分析しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150830/k10010209861000.html