イラク:マリキ前首相訴追の可能性も 対IS敗北で報告書
毎日新聞 2015年08月17日 19時30分
◇連邦議会調査委 第2の都市モスル制圧で
【カイロ秋山信一】イラク連邦議会の調査委員会は16日、昨年6月に過激派組織「イスラム国」(IS)の
前身組織に第2の都市モスルを制圧されたことに関して、マリキ前首相を含めた当時の政府・軍高官
35人に責任があるとする調査報告書をまとめた。マリキ氏が刑事訴追される可能性も出てきた。アバディ
首相は今年5月のラマディ陥落についても、当時の軍司令官らの訴追を命令、治安組織の引き締めを
図っている。
モスルでは軍や警察が大規模な抵抗をせずに逃走し、ISの侵攻を容易に許した。連邦議会は昨年12月、
議員26人による調査委員会を設立し、モスル陥落に関する調査を進めてきた。ロイター通信などによると、
報告書は「軍幹部に腐敗した人材を登用した」ことが原因として、マリキ前首相の任命責任を指摘。他にも、
当時の軍・警察幹部や地方政府幹部ら35人が訴追対象になる可能性がある。報告書は検察当局に
送付され、刑事訴追が検討される。
また5月にISに制圧されたラマディ攻防戦に関しても、アバディ首相は16日、徹底命令を受けずに敵前
逃亡した軍幹部らを訴追する意向を示した。ラマディではモスル同様、一部部隊が無抵抗で逃亡し、カーター
米国防長官から「イラク軍が戦意を見せなかった」と批判されていた。イラクメディアは「マリキ氏がアバディ
首相を揺さぶるため、影響下にある部隊を撤退させた」との疑惑を提起していた。
アバディ首相には、モスルやラマディの責任を追及することで、軍内部のマリキ氏支持派の影響力を
低下させ、治安権力を掌握する狙いもあるとみられる。ただ責任追及が進めば、マリキ氏支持派との
政争が激化する恐れもある。
一方、アバディ首相は16日、省庁再編によって33の閣僚ポストを22に削減する方針も表明。改革要求
デモを受けて今月上旬に打ち出した行財政改革について、迅速に実行する姿勢をアピールした。
http://mainichi.jp/select/news/20150815k0000m030008000c.html