◇政府の「原発回帰路線」が本格的に動き出す
九州電力が11日、川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)を再稼働させたことで、政府の「原発回帰路線」が本格的に動き出した。
川内1号機は、東京電力福島第1原発事故の教訓を盛り込んだ新規制基準に基づく「再稼働第1号」となったが、事故リスクがゼロになったわけではない。
事故から4年半が経過するが、時計の針を事故前に戻すことはあってはならない。
新規制基準で地震や津波対策などのハード面は強化された。しかしソフト面はどうか。
事故後、原子力防災の対象範囲は半径30キロ圏に拡大され、住民避難の対象も大幅に広がったにもかかわらず、川内原発では新しい避難計画に基づいた訓練は未実施だ。
防災範囲の拡大に伴って、その対象となる住民は全国480万人になると推定される。全国民の4%が原発の「地元」に属する時代となり、もはや原発事故は「対岸の火事」ではない。
にもかかわらず、住民避難は再稼働要件には含まれていない。
原子力規制委員会は新規制基準について「世界最高レベルの厳しさ」と表現するが、新規制基準と原子力防災は「安全の車の両輪」(田中俊一委員長)だったはずだ。
原発はいったん事故を起こせば国全体が崩壊しかねないことを、私たちは福島事故の教訓として学んだ。
同時に「絶対安全な原発はない」ことも身をもって知った。福島事故によっていまだに十数万人が避難を余儀なくされている。
4年半経過するが、あの事故を「なかったこと」「終わったこと」にすることは許されない。
同じ過ちを繰り返さないため、国と自治体、そして電力会社は住民避難や原発の安全対策の研さんを怠ってはならない。
http://mainichi.jp/select/news/20150811k0000e040163000c.html
http://www.jiji.com/news/graphics/images/20140716j-02-w330.gif