2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の建設問題で、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が昨年5月、基本設計の概算工事費を過少に見積もって公表していたことが、関係者の証言で分かった。設計会社側が約3000億円と提示したのに対し、JSCは資材の調達法や単価を操作するなどして1625億円と概算していた。
◇過少見積もり1625億円
正確な額が公表されていれば、計画見直しが早まった可能性がある。1625億円の根拠は7日に始まる文部科学省の検証委員会でも議題となる。
JSCは昨年5月、基本設計を発表した。8万人収容で開閉式屋根を持つ新競技場は地上6階、地下2階の鉄骨造りで延べ床面積は約21万平方メートル。概算工事費は1625億円とした。
関係者によると、昨年1月から本格化した基本設計の作業で、設計会社側は概算工事費を約3000億円と試算した。
しかし、JSCは「国家プロジェクトだから予算は後で何とかなる」と取り合わなかった。
JSCは1625億円を「13年7月時点の単価。消費税5%」の条件で試算した。さらに実際には調達できないような資材単価を用いるなどして概算工事費を過少に見積もったという。
基本設計発表の半年前の13年末、財務省と文科省は総工費を1625億円とすることで合意しており、JSCはこの「上限」に合わせた可能性がある。ある文科省幹部は「文科省の担当者が上限内で収まるよう指示したのではないか」と指摘している。
今年2月、施工するゼネコンが総工費3000億円との見通しを示したことでJSCと文科省は総工費縮減の検討を重ね、下村博文文科相が6月29日、総工費2520億円と公表した。しかし、膨大な総工費に批判が集まり、政府は7月17日に計画を白紙撤回した。
JSCは「政府部内の調整を経た結果、13年12月27日に示された概算工事費を超えないよう基本設計を進めた。基本設計に記載した1625億円は、設計JV(共同企業体)側とも確認のうえ算出した」と文書で回答した。
ソース
JSC:新国立工事費、「3000億円」設計会社提示無視 - 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20150807k0000m040143000c.html