月曜は英会話、火曜はバレエ、水曜はプログラミングで木曜は水泳、そして金曜にはお絵かき。こんなふうに、多くの習い事に忙しい子どもは少なくない。
子どもの可能性を引き出すた め? 本当にそうだろうか。教育ジャーナリストおおたとしまささんは「追いつめる親」につ いてこう話す。
「教育虐待」という言葉をご存じだろうか。
「あなたのため」という大義名分のもとに行われる、行き過ぎた「しつけ」や「教育」のことである。
私は最近『追いつめる親 「あなたのため」は呪いの言葉』(毎日新聞出版) という本を書く過程で、「死」と隣り合わせと言えるほど壮絶な教育虐待の実態を取材した。教育熱心すぎる親というのは昔からいた。
生活様式の均一化が極端に進み、「一億総中流」といわれた高度経済成長期。他人と差別化できるポイン トといえば、夫の出世か子どもの学歴くらいとなって、職場や教育現場では競争が激化した。
現在は、学歴が昔ほど重要ではなくなっているし、偏差値が高いからといって誰に自慢できるわけでもない。
しかし、終身雇用制の崩壊、経済のグローバル化、そして大学入試改革など、 世の中の先行きに対する不透明感が強まり、何を身につければこれからの社会で通用するのかがわからなくなってきたからこそ、逆に子どもの将来に不安を感じ る親が増えている。
その不安は、「早くから英語をやらせたほうがいいのではないか」
「プログラミング教育もしておいたほうがいいに違いない」
「スポーツも何か一つくらいで きたほうがいいだろう」などと多方面にわたる。
少子化で一人の子どもにかかる親の期待と不安は倍増。小さな子どもにあれもこれもといくつもの習い事をさせて、どこまでも追いつめてしまう。
そこに「子どもの出来は親の腕次第」という幻想が加わると、「なんとしてでもわが子にいい教育を与えなきゃ」という強迫観念が生まれ、親たちは、巷にあふれる「頭が良くなる勉強法」や「東大に合格させるための親の習慣」のようなものを熱心に研究し始める。
結局、「あの子の親は、息子を○○学校に入れたからすごい。この子の親は、娘を△△学校にしか入れられなかった」などという話になるのだ。
私自身、教育雑誌などのインタビューで「正解のない世の中を生きていかなければならない子どもたちに、いま、どんな教育をするのが正解なのでしょうか?」という冗談のような質問を本気でされる経験を何度かしたことがある。
質問者も「追いつめる親」も正解主義から抜け出せていないから、子どもの状態を見るより先に、「正解」に当てはめようとしてしまう。彼らが「正解」と考えた ものがたまたまその子にとっての最適解と一致すればいい。
しかしそれが一致しなかったとき、子どもは苦しいばかりだ。正解を疑わない親は、それでも無理やり子どもを正解に合わせようとする。
「あなたのため」が子どもを壊しかねないのだ。
おソース
http://a.excite.co.jp/News/society_g/20150730/asahi_20150730_0005.html