米国のローマ法王フィーバーに陰り
フランシスコ訪米間近、反資本主義や左翼思想への懸念?
(2015年7月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ローマ法王フランシスコが2013年にカトリック教会のトップに選出された時、米国のカトリック教徒の間では、新法王の
謙虚なスタイルや改革志向の計画、新大陸のルーツが米国における教会の命運を復活させるかもしれないとの期待が
沸き起こった。
だが、それから2年以上経った今、9月の法王訪米を前に、米国人、特に保守派が78歳のアルゼンチン人法王に
対して冷たくなったように見える。
米ギャラップの調査では、米国人の間で法王を好意的に見ている人の割合が2014年2月の76%から59%に低下した。
これは前法王のベネディクト16世を概ね上回っているが、ヨハネ・パウロ2世が法王在任中にほぼ一貫して記録していた
水準を下回る。
この明らかな幻滅感は、グローバル資本主義に対する法王フランシスコの批判がここ数カ月でエスカレートした後に
生じたものだ。法王は今月の中南米訪問で、縛りのない自由市場を「悪魔の糞」「狡猾な独裁」と呼び、先月の回勅
(かいちょく)――ローマ法王の教えの中で最も重要な形式――では、自然を略奪しているとして大企業を非難した。
米国は特に厳しい観衆
また、気候変動に対する行動を呼びかける法王の訴えは、地球温暖化を裏付ける科学にまだ疑問を抱いている
共和党の政治家にとって厄介だ。
「法王のメッセージにとって、米国が特に厳しい観衆であることは間違いない」。ボストンに本拠を置くカトリック系ウェブ
サイト、クラックスのジョン・アレン副編集長はこう言う。
「ある意味で、彼はとにかく我々の法王ではないという認識がある・・・反資本主義がどうこうというだけでなく、中心よりも
周縁を持ち上げる法王の意欲の問題もある。大半の基準で我々(米国)は中心だ」
法王が今月、左派のポピュリストであるボリビアのエボ・モラレス大統領から贈り物としてハンマーと鎌を象った十字架を
受け取った時のイメージは、本能的に社会主義を警戒し、場合によっては嫌悪感を覚える多くの米国人にとって、特に
不愉快だったかもしれない。
「ポーランド人のヨハネ・パウロ2世とドイツ人のベネディクト16世の時は、保守派はバチカン(ローマ法王庁)が完全に
共産主義に反対していることが分かっていた」
英国に本拠を構える国際的なカトリック教週刊誌ザ・タブレットのキャサリン・ペピンスター編集長は言う。
「だが、フランシスコについては、それほど確信できない。保守派は、中南米出身というルーツから、法王は解放の
神学者で隠れ左派だと心配している」
(以下略)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44411