二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場建設計画を、白紙に戻すと表明した安倍晋三首相。二年前の五輪招致演説では、白紙にしたデザインを念頭に、独創的なスタジアムでの開催をアピールし、財政措置を確実に実行すると明言していた。演説では、東京電力福島第一原発の状況について実態と異なる発言をして被災地などから批判を浴びた。演説内容があらためて問われている。
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首相は一三年九月、ブエノスアイレスでの国際オリンピック委員会(IOC)総会に出席。英語で招致演説を行い、その後の投票で東京開催が決まった。
演説では、福島第一原発事故について「私から保証します。状況は統御(アンダー・コントロール)されています」と明言した。しかし、汚染水が海に流出し続けるなど、原発事故は収束には程遠い状況だった。政府は今年六月の廃炉に向けた中長期ロードマップ(工程表)改定でも、使用済み核燃料の取り出し開始時期を大幅に遅らせており、現在も原発事故対応をコントロールできているとは言えない。
招致演説では、競技場について「ほかのどんな競技場とも似ていない真新しいスタジアムから、確かな財政措置に至るまで、確実な実行が(東京で開催すれば)確証される」と断言した。
新国立競技場は、民主党政権時の一二年十一月に日本スポーツ振興センター(JSC)が選定したデザイン。女性建築家ザハ・ハディド氏による、二本の巨大アーチ構造が特徴だ。このデザインについては一三年八月、世界的建築家の槇(まき)文彦氏が大幅な見直しを求める論文を公表した。首相はその約一カ月後に、新国立競技場を招致の目玉としてアピールした。
ザハ氏のデザインは、東京五輪開催が決まる「大きな原動力」(菅義偉(すがよしひで)官房長官)になったと政府内では受け止められている。自民党議員は「五輪招致の決定で重みを持ったのは事実」と指摘する。
首相は「民主党政権時代にザハ案でいくことが決まった」と強調するが、安倍政権も招致に最大限利用したことは否定できない。財政措置をめぐっても、既に確保できたのは五百億円のみ。当初見込んでいた工費千三百億円にも及ばない。
◆「予算委で追及」民主・枝野氏
民主党の枝野幸男幹事長は十九日、二〇二〇年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場建設計画の見直しに関し、予算委員会で安倍晋三首相を追及したいとの意向を示した。
新潟市で記者団に「問題は各省庁にまたがる。首相がどう指示し、情報が上がってきたのか。首相自身の問題であり(審議の)場は予算委になる」と述べた。
ソース
東京新聞:首相、2年前の五輪演説も白紙? 「独創的スタジアム」「福島統御」:政治(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015072002000117.html