ウクライナへ派遣を恐れ ロシア兵に相次ぐ離脱
2015年7月20日 朝刊
【モスクワ=常盤伸】ウクライナ東部に接するロシア軍の訓練場から多数の兵士が離脱し、軍法会議で「逃亡罪」などに問われている。
「義勇兵」としての東部派遣を恐れたためで、ロシア軍の秘密介入をめぐり、現場の兵士の間に動揺が広がっている可能性がある。
軍法会議の対象になっているのは、ロシア南部アドイゲヤ共和国マイコプにある第33独立自動車化狙撃旅団基地に属する兵士。
昨年秋、ウクライナ国境に近いロシア南部ロストフ州の訓練場に送られた後、訓練場から無断で離脱。
除隊届を出すため旅団基地に戻ったところを拘束された。
罪に問われた兵士の代理人を務めるマイコプの弁護士チェルネツカヤ氏らによると、訓練場では記章を外した軍人が一日八千ルーブル(約一万七千円)の条件でウクライナ東部への参戦をもちかけたという。
「ボランティアとして行く」などと記された誓約書への署名が条件。
報酬は実際には支払われていないという。
軍法会議は三月から開始。
五人が無許可で離隊した罪に問われたほか、一人が脱走容疑で半年の有罪判決を受けた。
同様の容疑で百人以上が軍法会議の対象になっている可能性が高いと指摘するチェルネツカヤ氏は、本紙の電話取材に
「多くの兵士はウクライナに強制的に派遣されるのではとの不安を抱えている」と指摘。
離脱兵の母親は「息子は何も悪いことをしていないのに、なぜこんなことになるのか」と動揺を隠さない。
ウクライナ東部では五月に、ロシア軍参謀本部の特殊部隊員二人がウクライナ軍により拘束。
東部で親ロ派を支援するロシア正規軍の存在を裏付けたが、派遣を忌避する兵士が罪に問われたのは初めて。
離反が拡大すれば秘密介入が困難となる恐 れがあり、当局も対応に苦慮しているもようだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2015072002000108.html