その時だった。
「破ぁ!!」
と子供とは別の鋭い叫び声が聞こえ、玄関の隙間から青白い光が漏れている。
その光が終わると、ドアを叩く音と、奇妙な呻き声はもう聞こえなくなっていた。
「ふぅ、これでもう安心だ また町を観察するといい。ついでに、扉も治しといた」
と玄関越しに呟くこの声は、バイト先の先輩で、寺生まれのTさんだった。
呆気に取られ、まだ震えながらアイロンを握っていた。すると、それを見透かしてか、
Tさんは「あまり夜更かしはするなよ」と小気味良く言って、足音を響かせて去っていった。
寺生まれってスゲェ・・・久しぶりにそう思った。