王様が朝早くに釈迦を訪れた。
曰く「私の国で独り身の金持ちが死んだ。私は相続する者のない彼の遺産を接収してきた。
金が五百、銀については数えきれないほど。それを私は自分の倉庫に運ばせてきた。
しかし彼の生前の様子を聞けば、ぼろ衣をまとい、酸っぱい粥をすすっていたそうだ」
釈迦は言った「その金持ちは阿呆である。富を受け取っておきながら
その富を使って自分を喜ばせず、父母を喜ばせず、妻子を喜ばせず、友達を喜ばせもしなかった。
例えるならその富は、人里離れたところにできた池である。
その水を飲んだり入浴したり洗濯したりする人のいないままに日照りで干上がってしまう。
その水は何の役にも立たなかった。彼の富も何の役にも立たなかった」