■廃炉工程に影響
遮水壁は国費320億円を投じ、政府が「汚染水問題の抜本的対策」に位置付けている。
汚染水を減らす工程を示した政府の中長期ロードマップでは、今年度内に全体の凍結を完了、28年度内には
1日約300トンの汚染水発生量が3分の1に減少すると見込んでいる。
規制委検討会に参加している高坂潔県原子力専門員は「年度内の凍結完了は難しい。
このままでは廃炉工程に影響が出る可能性がある」と指摘。
経済産業省資源エネルギー庁の担当者も「前例のない取り組みでどれだけの期間で凍結が完了できるかは
分からない。規制庁の認可も必要になるので年度内に終了するかは不透明」との見解を示した。
県原子力安全対策課は「汚染水の発生量を抑えられない状況が続くと、将来的にタンク容量が逼迫(ひっぱく)
することも見込まれる。早急に対策を講じてほしい」としている。
□背景
陸側遮水壁は地下水の流れを遮断する目的で凍土方式による凍結工法を用いる。
1~4号機の建屋周辺の約1500メートルに1551本の凍結管を設置し、冷却した冷媒(ブライン)を
移送管で送り、地中に配置した凍結管の中を循環させ周辺の地盤を凍結させる。
今年4月末から試験凍結を開始している。