安保法案:支持なき強行に怒り 衆院特別委で可決
政府・与党が強行採決に踏み切った。15日の衆院特別委員会。
日本の安全保障政策を根本から変える安保関連法案を巡り、「審議時間が100時間を超え議論は尽くされた」と言うが、審議が進むにつれ国民の疑問や不信はむしろ深まっている。
そんな状況に頓着しない政権に、国会の外で、内で、怒りが渦巻いた。
国会議事堂の外では午後0時25分ごろ、抗議活動のリーダーから「いま採決された」とアナウンスがあり、群衆から一斉に「えーっ」という驚きと怒りの声が上がった。
子供3人を連れ国会前にやってきた東京都墨田区の自営業、中村華子さん(35)は「これだけ反対の声が上がっているのに採決が強行されるとは、民主主義の国と言えるのか」と険しい表情を見せた。
「子供たちも戦争に関する映画や紙芝居を見たら、戦争は嫌だと感想を言う。この子たちが将来戦争に行かされるような国にはしたくないし、微力ながら抗議を続けたい」
抗議の群衆の中にいた東京都品川区の無職、井上勝代さん(78)には、痛切な戦争体験があった。
「自分たちは戦時中、日本が勝つと教え込まれたが、それがすべて間違っていたと後に知った。周囲には戦地から遺骨すら帰ってこなかった人もたくさんいる」。
体験を踏まえ「安倍首相は数の横暴を押し通したが、戦争の体験を本当に反省しているのだろうか。また昔に戻るようで、許せない」と怒りをあらわにした。
神奈川県茅ケ崎市から来た無職、辻村博さん(73)も「多くの学者が違憲と指摘し、世論調査でも反対が多数を占めている。それでも採決を強行していいのか」と憤った。
「何でもっと多くの意見を聞かないのか。孫の世代に戦争ができる国を引き継ぎたくはないし、何とか廃案に追い込みたい」
東京都葛飾区の元教員、大野静音さん(66)は、「教員をやっていた頃の教え子、戦争で苦しんだ両親の顔が浮かんで、若者を戦場に送らないために来た」と危機感を口にした。
「野党は欠席」との観測もあった委員会には結局、全野党が出席し、定刻の午前9時にスタートした。
「強行採決するんですか?」。民主党の長妻昭代表代行が質問でそう切り出すと議場の空気は一変する。
野党席から「ナチスのようだ!」「うそをつくな!」と怒号が飛んだ。委員席の後ろの議員傍聴席は満席。立ち見の議員もいる。
騒然とした雰囲気のまま最後の質問者、赤嶺政賢議員(共産)が審議続行を求める動議を提出。しかし、浜田靖一委員長は「起立少数」と即座に宣言、審議は打ち切られた。
野党議員は委員長席に殺到し「安倍政治を許さない」「強行採決反!!」とプラカードを掲げて抗議。しかし、数の力にはかなわず、怒号の中で与党議員の起立で法案は可決された。
この日質問に立った辻元清美議員(民主)は委員会終了後、涙ぐみながら「本会議で阻止する。(この法案は)絶対に危ない。戦争はあかんって」。
一方、元防衛相の小野寺五典議員(自民)は「委員会審議の後半は(野党の)反対のための反対になって残念だった。今日の採決は後味が悪いが、参院で引き続きしっかり議論してほしい」と硬い表情で語った。
一般傍聴席も満席だった。横浜市の無職、兼久須美子さん(42)は、あきれ顔で言った。「プロ同士のはずなのに、こんなにも議論が下手なのかと驚いた」
http://mainichi.jp/select/news/20150715k0000e010240000c.html