──バラカンさんから見た日本人のマナーは、いかがですか?
まず感じるのは、日本人と英国人とでは、マナーに対する考え方が基本的に違うということです。
英国人にとってマナーは、「自立した人間として、他人に不快な思いをさせないための自発的な行動」です。英国は個人主義を重んじる国ですから、一人ひとりが他人を最大限、尊重する。同時に自分も、他人から尊重してもらえるよう、普段から周りに良い印象を与えるべく努力します。だから意識せずとも、他人を気遣った行動ができるのです。
一方、日本人にとってのマナーは私から見ると「決められているから、仕方なく守っているルール」に映ります。
日本人は、ビジネスの現場で一対一で向き合っている時には、世界でもトップクラスの「マナー優等生」だと思います。礼儀正しいし、相手に対する細やかな心配りも素晴しい。ところが、仕事が終わった途端、豹変する。解放感とともに、マナーをすっかり忘れてしまうようです。
数時間前の「きちんとした姿」はどこへやら、スーツ姿のまま街中で酔いつぶれる。来日当時、日本のビジネスパーソンのそんな姿を見て驚きました。英国では、ビジネスパーソンがスーツ姿のまま、他人に酔いつぶれた姿を見せることはまずありませんから。