トヨタ新株に5倍の需要、野村最大の引受案件-手数料225億円
2015/07/02 18:04 JST
(ブルームバーグ):野村ホールディングス が単独主幹事を務めるトヨタ自動車 の新型株の購入を希望する投資家の需要が、
発行上限の5000億円を大きく超えたことが複数の関係者への取材で分かった。野村にとって過去最大規模のエクイティ案件となり、
手数料は225億円と収益に大きく貢献する。
関係者によれば、野村証券の全国159の支店ではトヨタ自動車第1回AA型種類株式への問い合わせや予約が殺到、新規
口座開設のための来店客が急増している。投資家の需要は3倍から5倍に達したもようだ。トヨタは2日午後、発行価格を
同日終値に3割上乗せした1万598円に決定、4992億円分を発行すると発表した。野村のいくつかの支店では顧客に同株式を
購入できる可能性が低いことを既に伝えている。
野村は2009年、三菱UFJフィナンシャル・グループ の公募増資1兆700億円のうち3000億円-4000億円規模を引き受け、
国内外で販売した。今回のトヨタ種類株はこれを上回ることになる。投資家は譲渡制限で5年間は売却できないが配当を
得られる。その後は普通株に転換するか発行価格での換金を選べるため、貯蓄と投資の両面性を持った金融商品として
人気を集めている。
東京都在住で元会社経営の後藤時雄さん(78)もトヨタ種類株の購入を希望する一人だ。6月のある晴れた日の午後、
都内の証券会社を訪問中だった後藤さんは「年金受給者など、高齢者に好まれるだろう」と話した。かつて投資で「ひどい
目にあった」という後藤さんは「世界的に市場が不安定になるリスクがある中、誰もがより安全な方に投資したいと思っている
はずだ」と語った。
2日のトヨタ株は前日比0.2%高の8153円、野村HD 株は同0.2%安の847.8円でそれぞれ取引を終了した。
野村への手数料
トヨタの開示資料によれば、野村が受け取る手数料は約225億円で手数料率は4.5%となった。ブルームバーグの集計によれば、
2010年から14年に実施された上位10社の大型公募増資案件で主幹事証券に支払われた平均は発行額に対して約4%だった。
複数の関係者への取材では今回のトヨタ案件は4%から5%の間になるとみられていた。
野村はトヨタ種類株から得られる収益を第2四半期(7-9月)に計上する見通しだ。SBI証券の藤本誠之シニアマーケット
アナリストも、野村に支払われるフィーは投資家への商品説明に手間がかかることや、資産は5年間凍結され、市場売却に
伴う委託手数料などの収益機会も見込めないため、通常の公募増資案件よりも高くなるとみていた。
トヨタの種類株を購入する投資家は2日決まった発行価格が同日終値 の3割高となったことから、5年後に利益を得るには
株価がそれ以上に上昇していなければならない。また普通株を保有する投資家と異なり、その期間に株価がどれだけ上昇
しても市場で売却できないため、収益機会を逃すリスクもある。
関係者によると、野村の支店ではトヨタ種類株を購入できない可能性を告げられた顧客から、割り当て基準を明確にすべき
だとの不満の声も出ている。それを受け野村はトヨタの種類株を少しでも多くの顧客に買ってもらうため買付金額の上限を23日、
5億円に引き下げた。同株式の需要動向や手数料について野村HDの山下兼史広報担当、トヨタのニコラス・マックスフィールド
広報担当はともにコメントを控えた。
(以下略)
http://www.bloomberg.co.jp/b