しかしだからといって、宇宙ステーションに滞在中の3人の宇宙飛行士が安心できるわけではない。
そのうち2人は9月以降もとどまり、またその間にクルーの数は倍の6人に増える予定だ。
■有人の「宇宙タクシー」計画にも影響
スペースX社は、2011年のスペースシャトル引退前にNASAの契約を勝ち取った。国際宇宙
ステーションへの物資補給は複数の国が分担して行っているが、米国は輸送手段を持たず、
ロシアへの外注を検討していた。
そのため、国内の民間宇宙企業は、補給ビジネスを自国へ取り戻す活路として期待がかけられていた。
(参考記事:特集「果てなき宇宙への夢」 )
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/070100164/01.jpg
7月3日に打ち上げ予定のロシアの補給ミッションが失敗すれば、NASAの宇宙飛行士スコット・ケリー氏
(写真右)は非常用の食料に手をつけなければならなくなる。(PHOTOGRAPH BY NASA)
ところが今回の事故が発生したことで、NASAの有人飛行計画にも暗雲が垂れ込めてきた。
現在、一時的措置としてNASAの宇宙飛行士はロシアのロケットに同乗させてもらって宇宙ステーションを
行き来しているが、スペースX社とボーイング社がその任務を引き継ぐべく、2017年の運行開始を
目指して「宇宙タクシー」の開発に取り組んでいる。
しかし事故のせいで、スペースX社の有人飛行計画は遅れを取る可能性がでてきた。人間を乗せた
飛行は、荷物だけを運ぶ任務よりも厳しい基準を満たさなければならないためだ。
「これで、ボーイング社のカプセルの方が先に有人飛行を開始する可能性が高まってきました」と、
ログスドン氏は語る。ただし、そこにも懸念材料が持ち上がっている。事故で失われた積荷の中には、
スペースX社とボーイング社のカプセルをドッキングさせるために宇宙ステーションへ設置するはず
だった設備も含まれていたのだ。