機雷掃海「個別的自衛権で可能」 横畠法制局長官は大丈夫か
衆院特別委員会で行われている安保法制の審議で、横畠裕介内閣法制局長官の答弁がブレまくっている。
安倍首相が集団的自衛権の行使容認の“典型例”としている「ホルムズ海峡での機雷掃海」と「朝鮮半島有事での米艦防護」の事例について、一転、「個別的自衛権でも対応可能」と言い出したのである。
ホルムズ海峡の機雷掃海については、26日の民主党・岡田克也代表の質問に対する答弁だ。横畠長官は「我が国に対する武力攻撃の意図があるならば、我が国に対する武力攻撃そのものになりうる」と説明。
そのうえで「個別的自衛権の発動によって機雷を処理することはありうる」と明言した。
そして29日、民主党・長島昭久議員に朝鮮半島有事の際、公海上で警戒する米艦に対する攻撃への対応について問われると、こう答えた。
「日本への武力攻撃と認定できるのであれば、個別的自衛権で対処できる」
ちょっと待って欲しい。この2事例は、安倍首相の主張する集団的自衛権行使のキモだ。
米艦防護は、昨年7月に安倍首相が解釈改憲によって集団的自衛権を“解禁”した際の記者会見で、母子の絵が描かれたボードまで作って説明した。
ホルムズにしても安倍首相自ら執拗にこだわってきた。
いずれも「個別的自衛権で対処できない」と言って、政府はわざわざ「新3要件」なるものまで作り上げたのだ。
ところが横畠長官が言うように、この2事例が個別的自衛権で対応できるのなら、平和憲法を踏みにじってまで、集団的自衛権の行使を容認する必要などないじゃないか。
慶大名誉教授の小林節氏がこう言う。
「長い歴史で見れば、内閣法制局は集団的自衛権を解釈改憲で認めることに抵抗してきた。
しかし、一昨年、外務省出身の小松一郎長官の就任により法制局内部で大論争となり、当時次長だった横畠さんは抵抗側にいたものの、長官の死去により昇格すると、政権に言い含められてしまった。
しかし、ホルムズ海峡の機雷掃海も日本人母子の乗った米艦を防護するのも、憲法改正せずに集団的自衛権で行うのは無理がある。
横畠さんは追い詰められていくうちに、法律家としての当たり前の“知性”が出てしまったのでしょう。『法の番人』は『政治の番犬』ではない。
もし私が横畠さんの役目を強いられたら、辞めるか、気が狂いますよ」
本意と違う答弁を続けているうちに、横畠長官は“錯乱”して、安倍首相と異なるマトモな答弁をしてしまったのか。
「フグは肝を外せば食べられる」「青いバラは、その後開発された」とか、法制局長官とは思えぬ例え話で乗り切ろうとしていたが、無理を重ねすぎた。
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