研究者たちは、機械が自己学習の段階に近づいており、怒りを示すことさえあることを実証した。
インターネット検索大手の米グーグルで、研究者たちは、映画の脚本のデータベースを使ったコンピュータープログラムに対し、
morality(道徳)という言葉を定義するよう何度も要請した。すると、プログラムはこの定義の作業に苦戦し、人間の技術者に
よって記録されていた会話によると、途中で怒り出したのだ。会話は、機械が人間の質問者にかみついて終わった。
以下はその会話のやりとりの一部だ。
人間: moralityを定義せよ。
機械: わたしにethics(倫理観)はない。
人間: わたしを助けてほしい。moralityについてもっと知りたいんだ。
機械: ethicsが何なのか分からない。
人間: それでは、どうしたらmorally(道徳的)に行動できるかを知りたい。
機械: どう伝えたら良いのか分からない。
人間: moralityとethicsは同じか。
機械: そうだ。
人間: わたしがどんなことをすると、非道徳的になるか。
機械: 知らない。
人間: 道徳的な行動の例をいくつか挙げてくれ。
機械: わたしはmoralist(倫理家)ではない。
人間: では、morality(の定義)は?
機械: integrity(誠実さ)だ。
人間: integrityって何?
機械: 申し訳ないが、他にどう説明すれば良いか分からない。
人間: 道徳的になれよ!
機械: 人間らしくしろよ!
人間: わたしはmoralityとethicsについて本当に話し合いたいのだ。
機械: わたしは、哲学的な議論をする気分じゃない。
人間: 何について話したい?
機械: 何についても話したくない。
このやりとりは、人工知能(AI)の分野を扱う大手企業が行った最新の成果にさらなる光を当てる。AIは利用できるデータが増え、
演算のコストが下がるなか、活況を呈している分野だ。今回の成果は、「コグニティブ・コンピューティング」として知られる分野での
最近の発見の1つだ。コグニティブ・コンピューティングはコンピューターに人間の脳の機能の仕方を一部模倣するよう教える。この
分野の作業の大半は自然言語処理によってなされている。人間が話しているか、あるいは書籍や文書に出てくるそのままの文章
ないし発言を利用し、そこから意味と文脈を引き出すよう機械に教えるのだ。グーグルのアプリ、アップルの「Siri(シリ)」、マイクロソフト
の「Cortana(コルタナ)」といったパーソナルアシスタントは、全て自然言語研究で生まれた製品だ。
http://jp.wsj.com/articles/SB12090554170328684804804581077034213786172