教育ってそういうことだったのか会議
政府は、国民の民度を超えられない 竹中平蔵・慶応義塾大学教授インタビュー(下)
2015年06月22日 竹中平蔵、中室牧子
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/281668/061000001/
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竹中平蔵・慶応義塾大学総合政策学部教授(写真=陶山勉、 以下同)
――フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏は累進資本課税を強化せよと言っています。
竹中:日本は既に、世界最高の資産課税をしています。
そのうえで、相続税の上限を50%から55%にしようとしています。
すると、富裕層は海外へ出てきますし、金銭を知的資産へと替えて相続していきます。
相続税は平等化を図るためのものなのに、機能していないのです。
ですから、格差を拡大したくなければ、これ以上相続税を上げてはなりません。
これ以上上限を上げるのは、頑張ってお金を儲けている人へのいじめです。
マーガレット・サッチャーはかつて「金持ちを貧乏人にしたところで、貧乏人が金持ちになるわけではない」
と言っています。なかなか辛辣で、彼女が日本の政治家だったなら問題発言とされていたでしょう。
しかし、これは正しい。
ですから、所得の再配分をするのなら、相続税から離れたところで考える 必要があります。
■中間層は所得税をほとんど納税していない
日経ビジネスオンラインの読者の方のうちどの程度が、自分自身の所得税率を知っているでしょうか 。
そして、所得税率が10%以下の人の割合がどの程度かを、知っているでしょうか。
イギリスでは、所得税率が10%以下の人は、全体の15%ほどです。
アメリカでは3~4割の人の所得税率が10%以下です。
では日本はどうかというと、実に84%の人の所得税 率が、10%以下です。
――ええっ。
竹中:これは、財務省が公開しているデータです。
日本では中間層の人がほとんど所得税を納めていないのです。
所得税が高いというのはウソ。
この中間層の人たちが税率20%くらいの所得税を負担すれば 、財政再建はあっという間にできます。
しかし、政治家は絶対に、普通の人の所得税を上げるとは言えません。
だから、幅広く課税するためにと消費税を上げるのです。
しかし、消費税は明らかに逆進性があります。
それで社会保障という所得配分を行おうとするのは筋違いです。
他の国は、所得税を財源に、社会保障の仕組みを維持しています。
ではなぜ、この国ではそうではないのか。
それは、政策リテラシーが低いからです。
福澤諭吉先生が言われたように、政府は国民の民度を超えられません。
政策の質を高めたければ、国民が賢くならなければならない。
だから福澤先生は、『学問のすゝめ』を書かれたのです。