うんちのふりをするイモムシ 効果のほどは?
~鳥の糞になりすます行動の効果を、日本人研究者が検証
自分がもし、おいしそうなイモムシだったら、腹を空かせた鳥からどうやって身を守ればよいだろうか? 鳥の糞になりすますのも一案だ。
しかし、ただ体の色が糞に似ているというだけでは完璧な変装とはいえない。特に、体の大きなイモムシはすぐに正体がばれそうだ。このほど学術誌『アニマル・ビヘイビア』に発表された論文によると、鳥の糞になりすますためには、糞の形に見える体勢をとらなければならないという。
木の枝や石、糞のふりをするのは身を守るための作戦で、動物の世界では当たり前のようにみられる。トカゲは石ころに、昆虫は木の枝に、そしてクモは糞になりすます。周囲の環境に溶け込んだ生き物を見つけ出すのは、『ウォーリーを探せ』の絵本を開くような気分だ。
「イモムシが鳥の糞そっくりに見えるのは、大変面白いと思いました」と、論文を執筆した総合研究大学院大学の鈴木俊貴氏は言う。
鈴木氏と、論文の共著者である立教大学の櫻井麗賀氏は、400個以上の偽のイモムシを作成し、木の枝の上に置いて実験を行った。体を曲げているものとまっすぐに伸ばしているものを混ぜ、色も緑一色だけでなく、糞の色に似た白黒のものも用意した。
緑色の偽イモムシに関しては、体勢の違いによって鳥につつかれる確率が変わることはなかった。しかし、白黒の方は、体を伸ばしていた方が曲げていた方よりも襲われる確率が3倍近く高かった。
「イモムシは鳥の攻撃を避けることに、多くの時間を費やします」と、米ハワイ大学の昆虫学者ダニエル・ルビノフ氏は言う。「イモムシ以外の何かに体を似せれば似せるほど、襲われる確率は低くなるんです」。ルビノフ氏は今回の研究には参加していない。
イモムシは、目視で狩りをする多くの鳥から身を守るために、何百万という世代を重ねるなかで徐々に外見を変化させてきた。ルビノフ氏はこう語る。「科学者である私たちも忘れがちですが、それがどれほど長い歳月であったか、その長さがどれほど重要なのかということを、心に留めておかなければなりません」
では、私たちは何を学んだか? うんちのふりをするなら、手を抜かず、きちんと体を折り曲げるということだ。
全文はこちら http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/061900152/
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