男性的な趣味のイメージが強いプラモデルを楽しむ女性が増えている。通称「モケジョ(模型女子)」。まだまだ“男社会”だが、
プラモデルを組み立てることを仕事にしている女性もいる。職業名はプロモデラー。第一線で活躍するオオゴシ*トモエ(36)の
アトリエを訪ねると、プラモデルに込めた乙女心が伝わってきた。
都内に借りた6畳間がオオゴシの仕事場。棚には塗料や接着剤、模型関連の書籍などが整然と並ぶ。棚の上に何十個と
積まれたプラモデルの箱は城や戦車、戦艦など。中でも多いのは人気アニメ「機動戦士ガンダム」シリーズのプラモ。通称ガンプラだ。
この日、机に広げられたのもガンプラ。だが、一般的なイメージとはひと味違う。アニメに登場するモビルスーツ(ロボット)を、
ぬいぐるみのようにアレンジしたカワイイものだ。パステルピンクの部品をランナー(プラスチックの枠)からニッパーで切り離し、デザイン
ナイフで切断面を整える。柔らかい笑顔と、しなやかな手つきが印象的だ。
模型誌への掲載や、イベント展示用に月2~3個、趣味も含めれば月10個作ることもある。朝から夜までアトリエで過ごす
ことも多い。
手掛けた作品が模型誌をはじめ、多くのメディアに取り上げられている人気モデラー。特に塗装の評価が高く、男性が考え
つかない色使いで業界を驚かせてきた。
広島県出身。竹細工や帆船模型作りが趣味の父の影響か、プラモ作りが好きな少女だった。高校卒業後、声優を目指して
上京。「大好きなアニメに関わる仕事がしたかった」という。レッスンを受けながらライブなどを行う、声優の卵たちによるグループ
「Kirakira☆メロディ学園」に加入。その一方で、趣味のプラモ作りを続けていたところ、「女の子でプラモ好きは珍しい」と、
プラモデル業界関係者から「プロモデラー」の道へ声を掛けられた。
(中略)
男女の埋められない溝に悩んだ時、救ってくれたのは、先輩男性モデラーの言葉だった。「オオゴシは“カワイイ”という感覚を
持つのが強み」
おそらく女性には、人形にカワイイ服を着せ、自分が着る服に何時間も悩む…そんな体験で磨かれるセンスがある。だからこそ
自分は、自分の経験から得た女性らしさで勝負すればいい。そう思えた。
オオゴシの代表作の一つに、約10年前に作った白いガンプラ「キュベレイ」を“パールホワイト”で塗ったものがある。使った塗料は
マニキュアだった。男性モデラーでは思いつかない発想。細かな粒子が光を反射し、キラキラして美しいと話題になった。その後、
プラモ用にパール系塗料が発売され始めた。
オオゴシ作品には、カッコいい戦車やガンプラにも隠し味のように“カワイイ”が利いている。
ここ5年ほどは、女性向けの教室を積極的に開催。「男性的とされる趣味も、女性が楽しめると幅が広がる。業界全体が活性化
してほしい」と期待を寄せる。少子化やテレビゲームの台頭で、プラモデルを楽しむ人々が減っていると指摘されている。「今やプラモ
に触れた体験がない親も多い。手を使い何かを作る喜びは、子供のうちに体験してほしい」と考えている。
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2015/06/15/kiji/K20150615010546490.html