ホテルのバーで酒に薬物を入れられ、見知らぬ男にレイプされた。犯人は米軍横須賀基地の空母乗組員。基地への通報後、日本の警察が来た。男はすぐ見つかり、身元が判明した。
だが、さらなる悪夢が待っていた。「検証写真を撮る」と横須賀署員に現場へ連れ戻された。下着もつけていない。怖くておぞましくて泣いた。「あんたもヤリたかったんだろ」。警察官の忍び笑いが聞こえた。
傷だらけの体が痛んだ。病院へ行きたいと頼んだが「開いてない」と言われた。犯人の精液採取もされないまま、我慢の限界に達し「法医学的証拠は、尿と一緒に出て行った」。極度の疲労と睡眠不足で「家に帰して」と訴えても聞き入れられない。事情聴取は翌日まで十四時間に及んだ。
直後から心的外傷後ストレス障害(PTSD)が襲った。眠れず食べられず、感情が制御できない。「レイプされたのはこの女だ!と空から指さされている気がした」。同居していた母までストレスで腸に穴が開き、生死をさまよった。
日本の検察は三カ月後、米兵を不起訴にした。理由の説明はなかった。その後、民事訴訟中なのに犯人は帰国。勝訴後、防衛省が代わりに見舞金を払った。
「このままでは終われない、と思ったの。だって、私は悪くない」
ネットで情報提供を呼びかけた。米国在住の別の被害女性から連絡があり、犯人の行方を突き止めた。米国でも訴えを起こし、勝った。その裁判では「米軍の命令で帰国した」という犯人の証言も引き出した。