http://www.tokyo-np.co.jp/article/culture/doyou/CK2015061302000247.html
ページをめくるのが、どうにもつらい。電車の中で読んでいたら、あっという間に視界がぼやけた。ところが読み進めると、だんだん力が湧いてきた。なぜ?
その本が、先月末出版された『涙のあとは乾く』(講談社)。著者はオーストラリア出身で、日本に住むキャサリン・ジェーン・フィッシャーさん。二〇〇二年、神奈川県横須賀市内で、米兵にレイプされた。勇気を出して立ち上がり、犯人や日本の警察、被害を隠す日米両政府と闘った記録をつづった。
「わたしが、日本で最初の米兵のレイプ被害者だと思っていました。調べたら、ものすごい数の日本人が被害にあっていた。日本政府は、いったい今まで何をしていたの?」
流暢(りゅうちょう)な日本語で話しながら、キャサリンさんは巻物のような紙を取り出した。どんどんのばすと大蛇のように部屋中に広がった。戦後沖縄で起きた米兵の性犯罪をまとめた年表だ。
キャサリンさんは弁護士だった父の転勤で、三十五年前に来日した。沖縄出身の男性と結婚し、三人の息子に恵まれた。離婚して英会話講師の仕事と子育てに奮闘していた時、事件は起きた。