【被災地から-東日本大震災】
石巻市・田代島 復興に一役“猫の手”
「ニャーン…」。夜明け前の薄暗い漁港に響く小さな鳴き声。
振り返ると数匹の猫と目が合った。
宮城県・石巻沖に浮かぶ田代島の守り神は猫。
大漁と海の安全を守る動物として大切にされている。
多数の猫と住民が共存する「猫島」として知られ、外国人観光客にも人気を集めている。
東日本大震災では漁港周辺が1メートル以上も地盤沈下。
桟橋が使用困難になり、カキの養殖棚も多くが津波で流されるなど、被害は大きかった。
猫島のピンチを救おうと始まった募金は3カ月で1億5千万円に到達、驚きの「猫の手パワー」が話題を呼んだ。
しかし、喜んでばかりはいられなかった。カキ養殖の漁師は多くが高齢者。
養殖を再開するには体力的な問題もあり、比較的負担の少ない刺し網漁に変える人が相次いだ。
島の漁師、阿部頼男さん(77)は「マイナスからの再出発。年寄りには厳しい」とため息をつく。
高齢化や後継者不足が深刻な島では募金成功を喜べない現状もある。
田代島は今も猫目当ての観光客が絶えない。
民宿を営む尾形あやめさん(82)は「石巻と結ぶ定期船の便数維持 のためにも、たくさんの人が船で訪れてくれ感謝している」と話す。
港でたたずむ猫は、自分の存在が復興に一役買っていることなど知る由もなく、きらめく海を見つめていた。(写 真報道局 尾崎修二)
◇
動画は「産経フォト」sankei.com/phot o/、または「YouTube」産経新聞チャンネルでご 覧になれます。
http://www.sankei.com/images/news/150607/lif1506070027-p5.jpg
http://www.sankei.com/images/news/150607/lif1506070027-p3.jpg
http://www.sankei.com/life/news/150607/lif1506070027-n1.html