特集ワイド:続報真相 「安倍語」なぜ共感できないか
http://www.mainichi.jp/shimen/news/20150605dde012010022000c.html
毎日新聞 2015年06月05日
◇「ごまかし話法で脅し」/「最前線・沖縄、隠す狙い」
「バカヤロー」や「無党派は寝ててくれたらいい」のような歴史に残る暴言があったわけではない。
だが、安全保障法制を巡る一連の答弁は、いかがなものか。
安倍晋三首相の国会論戦での「言葉」だ。
野党からは「長過ぎる」「質問に答えていない」と非難ごうごう。
国家の根本方針の大転換にもかかわらず、議論は深まらない。
そのカギを握る「安倍語」を探った。
◆「丁寧な説明をしたい」と言いつつ「一概に申し上げることはできない」
誰もが「またか」と思っただろう。
5月28日の衆院平和安全法制特別委員会で、辻元清美議員(民主党)が質問に立った時だった。
辻元氏 「『ちょっとだけ』といって、いつも大きな戦争に広がっていってるわけです。総理、こうもおっしゃってますよ」
安倍首相 (着席したままで)「早く質問しろよ!」
2月の衆院予算委で、首相は西川公也前農相の献金問題を追及する民主党議員に「日教組もやっているよ!」と事実でないヤジを飛ばし、陳謝に追い込まれた。
にもかかわらず、品のない発言を繰り返した。
直後に「言葉が少し強かったとすればおわび申し上げたいと思います」と述べ、1日の特別委でもわびた。
が、「少し強かったとすれば」という留保がひっかかる。
「歴代首相の言語力を診断する」の著者で、立命館大の東照二教授(社会言語学)は「『言葉にパンチを利かせすぎたが、内容は誤っていない』と言っているよう。国民の理解を得たいと思っているか疑問です」と言う。
首相は一連の法改正について「残念ながら国民の理解が進んでいない。委員会を通じ、国民的な理解を深めたい」(5月28日、維新の党の太田和美議員への答弁)と述べ、また「丁寧な説明をしたい」と何度も口にしている。
だが、言行が一致しているとは思えない。例えば、こんな具合だ。
27日、松野頼久議員(維新)は「法改正をしなくてはならな い何か相当な危機が迫っているのか」と問うた。
首相は「では危機が起こらないと言えるのか」と反論した。
東さんは「この逆質問は『あなたとは価値観を共有しない』と相互理解を拒む姿勢の表れです」と解説する。
さらに松野議員が「(武力行使できる新3要件に盛り込まれた)『国民の幸福追求権を根底から覆す事態』とは何か」と具体的な説明を求めると、「実際に発生した個別具体的な状況に即し て判断する必要がある。一概に申し上げることはできない」
「どういう危機になるか個別的に申し上げられない。(言うことは) むしろ無責任ではないか」と突っぱねた。
ここで思い出すのは、小泉純一郎元首相のあの発言だ。
2003年7月。イラク復興特別措置法案の審議中、陸上自衛隊の派遣先を「非戦闘地域」と限定し、その具体例を問われた。
小泉元首相は「どこが非戦闘地域かと聞かれても、わかるわけがない」と答弁。
野党の激しい批判を浴びた。
だが、東さんは違った角度から分析する。
「確かに無責任な発言といえますが、本音を正直に語っている。事態は刻一刻と変化するので、『わからない』はある意味で事実。国民は『そ りゃあわからないよね』と共感を覚えてしまう」。
一方の安倍首相。「答弁に具体性がないのは小泉さんと同じですが、安倍さんの『一概に言えない』『答える