東証一部上場で、二〇一一年決算期の売り上げ上位百社(現在は合併で九十九社)の七割が、厚生労働省の通達で過労死との因果関係が強いとされる月八十時間以上の残業を従業員に認めていることが、本紙が実施した情報公開請求や各社への調査で分かった。一二年四月の前回調査と傾向はほとんど変わっていなかった。
国会で審議入りが予定される労働基準法改正案は、長時間労働をしても残業代や割増賃金を支払わなくてよい対象を広げる内容だが、長時間労働に歯止めがかかっていない実態をあらためてうかがわせた。
本紙は昨年十一月、九十九社の本社所在地の労働局に、各社の「時間外労働・休日労働に関する協定(三六協定)届」の情報公開を請求した。今回開示された資料によると、いわゆる「過労死ライン」とされる月八十時間以上の残業を認めている企業は七十二社(前回七十三社)、月百時間以上は三十七社(同三十八社)だった。
労使で残業の上限を決めた時間が最も長いのは、関西電力の月百九十三時間。日本たばこ産業(JT)が百八十時間、三菱自動車が百六十時間と続いた。
前回調査時より引き下げたのは、月百三十五時間から百十五時間にした中部電力など十二社。逆に東京電力など八社が引き上げた。
本紙は今年一~二月、残業時間を一律に規制することについて、各社にアンケートも実施。回答した四十七社のうち二十八社が反対を表明。日立製作所、丸紅などは「企業により働き方が多様である」ことを理由に挙げた。一律規制に賛成したのは十四社。五社がどちらともいえないとした。
<三六協定> 残業を例外的に認めた労働基準法36条に定められた協定。同法で定める労働時間は1日8時間、週40時間。企業がこれを超えて労働者を働かせるには、労使合意に基づき書面で上限時間などを定めた協定を結び、労働基準監督署に届け出なければならない。協定には月45時間、年360時間までという上限があるが、上限を超えて働かせられる「特別条項」があり、これが健康や生命を害するほどの残業時間の高止まりにつながっているとされる。
ソース
「過労死基準」超、依然7割 長時間残業改善なく:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015060102000059.html