滋賀の山奥に、一匹の熊が暮らしていました。
熊は、毎朝お地蔵さまに供えてあるおむすびを食べに行くのが日課でした。
「朝ごはん朝ごはん~♪」
トコトコと歩いていくと、お地蔵さまの前に屈みこんでなにやらゴソゴソやっている人間を見つけました。
「やや!ぼくのエサ場をいたずらしてるやつがいるクマ!
よーし、そーっと近づいてビックリさせてやるクマ!」
熊はそろりそろりと人間の背後まで近づきました。
「にゃむにゃむ……」お地蔵さまに屈みこんでなにやらモゴモゴ言っていたババアは、
気配を感じて振り返りました。すると、目の前に大きな熊の顔があるではありませんか!
ババアは一瞬思考停止に陥りましたが、熊の熱い息が頬にかかると
「ヒィッ!」と大きな悲鳴をあげて飛び上がりました。
熊も、ババアの突然の発作に驚き「ヒィッ!」とババアの頬をバチコーン張りました。
ババアは「グフゥー」と、泡を吹いて倒れました。
熊は、やっちゃった!と思いましたが「へ、へへん!思い知ったかクマ!
ぼくのごはんを横取りしようとするからこうなるクマ!」と強がりました。
そのとき、はだけたババアの懐から、おむすびの入った包みが転げ落ちました。
それを見たクマは「ババア、おまえだったのか……」と、涙を流したのでした。