警官、容疑者に「便宜供与」 「男気見せた」と説明
2015年5月19日
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「便宜供与した」と書かれたメモ。大阪府警と福井県警の巡査部長の署名、押印などがある(署名と印影、指印にモザイクをかけています)
私は容疑者に便宜を供与しました――。ともに30代の大阪府警と福井県警の男性巡査部長が、近畿や福井県内で窃盗などを繰り返したとして起訴された住所不定の無職男(47) に対し、取り調べの際にそんなメモを書いたとして所属長注意を受けたことが捜査関係者らへの取材でわかった。
男は覚醒剤取締法違反罪(使用、所持)を含めて五つの事件で起訴され、 大阪地裁で公判中。
懲役8年が求刑され、21日に判決が言い渡される。
男は「実際に便宜を受けた」と主張 し、警察側は「便宜供与はない」と反論している。
起訴状などによると、男は大阪市平野区の工事現場で2013年11月に工具を盗んだとして、同12月に窃盗などの疑いで逮捕、起訴された。
同年10月にも和歌山県かつらぎ町で駐車中の車からチェーンソーを盗んだ際、立ちはだかった持ち主を振り切って乗用車で逃走したとして事後強盗の疑いで再逮捕され、昨年7月に追起訴された。
警察官2人は 大阪府警捜査3課と福井県警捜査1課に所属し、合同捜査本部で一連の事件をともに捜査。
男と警察官側の公判での証言によると、メモを書いたのは追起訴の5日後の昨年7月20日、余罪捜査のために府警西成署で男から事情を聴いていたときだった。
取り調べの際、男は事後強盗罪で追起訴されたことに激高。
協力しない態度を取り、警察官2人が男に便宜を図った旨のメモを書くよう求めたという。
2人は要求に応じ、府警の巡査部長が「弁ギ(原文のまま) 供与いたしました」と書き、署名して押印。
福井県警の巡査部長は「私1人で、べんぎきょうよしました」と記して署名 し、指印を押した。
男はメモを留置場に持ち込んで弁護人に託し、弁護側は公判でメモを証拠申請して採用された。
男は公判でメモを要求した理由について「事後強盗の疑いで逮捕された際、警察官から『(罪が比較的軽い)窃盗罪で起訴する』と約束されていたのに裏切られた」などと説明。
「取調室で知人の携帯電話番号を教えてもらうなど様々な便宜を受け た」と主張した。
府警と福井県警 の巡査部長は公判でこの約束や便宜供与を否定。
メモを書いた理由についてそれぞれ「書いたら被告の気持ちが落ち着くと思った」「男気のようなものを見せれば納得すると思った」と語った。
両府県警は、便宜供与を申し出たり約束したりしてはならないとする国家公安委員会の規則に反するなどとして2人を所属長注意にした。
両府県警は「メモを書いたのは間違いないが、実際に便宜供与した事実はない」としている。
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