川や海などの水を調べれば、そこに、どのような生き物がいるかが分かる「環境DNA」と呼ばれる新しい技術が今、大きな注目を集めています。日本で独自の進化を遂げた技術で、絶滅が危惧される生物の保護や漁業などへの応用に期待が高まっています。
この技術は神戸大学の源利文特命助教らの研究グループなどが開発しました。
川や海などの水をくんで、フィルターによって生き物の粘液やふんをこし取り、それを分析してDNAの情報を明らかにすることで、その場所にどのような生き物が住んでいるかを見破ります。
この技術の実証実験には国内の多くのグループが取り組んでいますが、このうち、源特命助教らのグループは、国の特別天然記念物に指定されているオオサンショウウオの生息調査を行っています。オオサンショウウオは夜行性で岩の陰に隠れて生息するため、調査はこれまで夜間に川に入り、くまなく探す必要がありましたが、この技術で京都府や兵庫県の川を調べたところ、水をくんで分析しただけで、実際にオオサンショウウオが生息していることを確認できたということです。
一方、北里大学のグループは、この技術を使い、絶滅が危惧されるニホンウナギの稚魚を、外国産の別の種のウナギの稚魚と見分ける手法を開発し、ことし3月、日本水産学会で発表しました。この手法を使えば、魚を殺すことなく、一度に大量の稚魚の種類を判別することが可能になり、水産庁は今後、ウナギの稚魚の販売業者や養殖業者に活用してもらうことを検討しています。
また、この技術は生き物がそこにいるかだけでなく、どれほどいるか、量を推測することにも利用できることが分かってきました。京都大学のグループは京都府の舞鶴湾で潜水調査によって明らかになったマアジやカタクチイワシの量と、海水のDNAの量の関係を調べました。その結果、実際に海の中で確認できた魚の量と、DNAの量は同じ傾向を示すことが分かったということです。
この「環境DNA」と呼ばれる調査技術は日本で独自の進化を遂げましたが、最近では欧米でも技術開発が進んでいて、各国間の競争は激しさを増しています。技術を開発した源特命助教は「今後は、より高い精度で、住んでいる生き物の種類を判別できるようにしたい」と話しています。
以下ソース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150509/k10010074321000.html