まるで一般企業「営業ノルマ」に「残業手当」「社員旅行」も…特殊詐欺アジトの“仰天真実”
産経新聞?5月6日(水)19時15分配信
警視庁捜査2課に摘発された特殊詐欺グループのアジトから押収されたホワイトボード。会社のように売り上げ目標などの営業ノルマが書かれていた(写真:産経新聞)
一見ごく普通のサラリーマンやOLが出入りしていた“会社”は全国から数億円をだまし取った特殊詐欺のアジトだった。営業ノルマを課され、残業手当まで支給されていたという“社員”ら。警視庁捜査2課はアジトの摘発でパソコンや携帯電話を押収。電子マネーやメールを使った新手の詐欺グループのあきれた実態が明らかになってきた。
■高級オフィスビルにパソコン40台、サラリーマン装い詐欺メール
3月下旬、東京都新宿区高田馬場の高級オフィスビルの一室で、整然と並べられたオフィス机の上に置かれたパソコン40台に、20~30代を中心とした男女の社員やアルバイトが向き合い、何かを黙々とキーボードに打ち込んでいた。
「普通の会社のオフィスと変わりない」と捜査幹部も驚いたこの一室はその実、捜査2課が以前からマークしていた特殊詐欺グループのアジトだった。社員らがせっせとパソコンに打ち込んでいたのは、被害者への詐欺メールだ。
捜査2課は社員らが業務にいそしむなか、アジトに突入。詐欺容疑で、詐欺グループのトップで介護関連会社「ホットスペース」代表取締役、竹本宗晴容疑者(36)ら総勢40人をこれまでに逮捕。パソコン・携帯電話それぞれ40台を押収し、全国から4億円以上をだまし取っていたとみて、分析を進めている。
■「詐欺の会社と思わなかった」
「詐欺の会社だとは思わなかった」。逮捕された社員やアルバイトの大半はそう供述しており、実際に会社に入るまで、一般の会社だと誤解していたという。
無理もない。ホットスペースは会社の業務として「その他適法な一切の事業」と記載。社員やアルバイトは「メールオペレーター募集」と銘打って、インターネットなどで堂々と募集していたのだ。
室内の風景も一般の会社そのものだ。オフィス内のホワイトボードには「売り上げ目標」「日計目標」「現状売り上げ」などを横軸に並べ、縦軸に社員の所属するグループ名を記載。金額を書き込んでノルマを課し、各グループの営業競争をあおっていた。
ただ、社員やアルバイトの勤務管理は、普通の会社も顔負けの厳重なもので、むしろ奴隷のような管理だったようだ。
勤務時間はタイムカードを押させることで厳重に管理。私用の携帯電話はかばんの中にしまうか、所定の容器に入れるよう規定され、勤務時間中の使用も禁止。オフィスのドアの開閉は午後0時~2時に限られ、昼食は30分以内に限定された。
勤務ルールには過酷な罰則もセットになっている。遅刻2回目までは罰金1千円だが、3回目以降は時給から50~300円引かれる仕組みに。直前のシフト変更にも1千~5千円の罰金が課せられた。音楽やネットサーフィンも厳禁で、給料の半分を罰金として取り上げるなど、徹底した厳罰主義。入社時にはこうしたルールを明記した書類に署名させていた。
それでも、会社を離れる社員やアルバイトは多くはなかったようだ。この詐欺グループの報酬は竹本容疑者ら最高幹部が125万円で、幹部は85万円、社員でも35万円。残業手当も支払われ、社員旅行まで行われていた。「詐欺だと分かったが、報酬が高額なため続けた」。逮捕された社員らのなかには、そう