未婚であることや仕事を続けるためなど、社会的な理由で卵子を凍結保存し将来的な妊娠・出産に備えている女性が、全国で少なくとも353人に上り、
2699個の未受精卵が凍結保存されていることが、毎日新聞の調査で分かった。
12施設で凍結保存しており、別の13施設も「将来的に実施したい」と回答。社会的卵子凍結がさらに拡大する可能性がある。
調査は4月、日本産科婦人科学会(日産婦)に登録している医療施設のうち、不妊治療が可能な東京、大阪、愛知、福岡の4都府県の168施設を対象にアンケートした。
52.9%にあたる89施設から回答があった。
凍結保存している12施設の内訳は、東京6、大阪5、愛知1。うち2施設は採卵を中止したが、現在も卵子を凍結保存しているという。出産例はなかった。
日本生殖医学会は2013年、対象は成人女性で本人の生殖以外は使用できない
▽40歳以上の採卵と、45歳以上の使用は推奨できない
▽医療技術のリスクの説明と同意−−などの条件を付けた指針を示して、社会的卵子凍結を容認。一方、日産婦は妊娠率の低さなどから「推奨しない」としている。
12施設のうち、開始時期が最も早いのは04年。同医学会の指針提示後に始めたのが5施設あった。
指針の妥当性を尋ねたところ、採卵年齢について「適切」とした施設が大半だったが、「希望者の年齢は40歳より高く適切でない」と回答したのが7施設あった。
女性が凍結を希望する主な理由(複数回答)を尋ねたところ、9施設が「パートナーが見つからないため」、6施設が「仕事を優先するため」と回答。
いずれも、大都市で進む、キャリアアップを志向する女性の増加や長時間労働による出会いの制約など、働き方の変化による晩婚化、晩産化が影響しているとみられる。
一方、少子化対策の一環として、千葉県浦安市が今年度から始めた、社会的卵子凍結事業への補助制度については、全体の71.9%にあたる64施設が「少子化対策に役立たない」と回答した。
主な理由は「不妊治療の開始を遅らせる」「体外受精で出産する確率が低い」などだった。
また、自由記述では「凍結保存により『いつでも妊娠できる』という過信を招く恐れがある」(愛知県内の施設)、「晩婚化を促進するため、少子化はさらに深刻化するだろう」(福岡県内)−−など、社会的卵子凍結の広がりを懸念する声が多かった。
http://mainichi.jp/select/news/20150502k0000m040166000c.html