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今回の管理ルールの見直しは、コミュニティ活動条項が主題ではなく、大きく2つの課題が
浮上していた。一つはマンション管理組合の役員に、区分所有者以外の外部の専門家が
就任する「第三者管理」を導入するかどうか。もう一つは、区分所有法では総会の議決権は
原則として「専有面積割合」とされているが、新たにマンションの財産価値に応じた「価値割合」
を加えるかどうかだ。
(中略)
議決権の価値割合は、マンションの高層化・大型化によって同一マンション内で財産価値が
大きく異なる住戸が生じたことへの対応だ。専有部分面積に応じた「専有面積割合」や
「一住戸一議決権」という従来の方式は各住戸が比較的均質な場合を想定しており、ここ
10年間に急増している超高層マンションでの合意形成の円滑化を図るため「価値割合」が
加えられることになった。
しかし、戸建て住宅が中心の自治会や町内会などコミュニティでの合意形成で、住宅の面積
割合や価値割合で議決権に格差が生じることはない。1人1票、1世帯1票が原則である。
マンションでも従来は面積や間取りも均質な物件が多く、1住戸1議決権が大半を占める。
超高層マンションでも、筆者が取材した50階以上の物件では管理費・修繕費は専有面積割合
だが、総会の議決権は1住戸1議決権だった。ご近所付き合いなどのコミュニティ活動を考えると、
やはり議決権に格差を付けにくいのだろう。
国交省がコミュニティ活動条項の削除にこだわる背景には、議決権の価値割合方式を導入
しやすい環境を整えたいとの配慮が働いているためではないか。コミュニティ活動条項が
なくなれば、マンションを共有財産として経済合理性に基づいて管理しやすくなるのと同時に、
資産評価も財産価値に基づいて算定する根拠となるからだ。
区分所有法では、議決権割合に基づいて区分所有者の権利も定められている。敷地の持ち分も
議決権割合によって決められ、固定資産税の算定はマンションの敷地を住戸数で均等に割って
課税する仕組みとなっている。相続税の資産評価も敷地を専有面積で割って計算されている。
今年1月から相続税の基礎控除額が減額され、相続税の課税強化が図られたが、相続税対策
として富裕層を中心に人気なのが超高層マンション上層部の高額物件だ。相続税対策の基本は
相続税の対象となる財産の資産評価額をいかに圧縮するか。その対策として超高層マンションの
購入はうってつけなのだ。
「物件によって圧縮効果は異なるが、平均してマンション価格の半分。中には3分の1に圧縮
できたケースもあった。それが超高層マンション上層部が人気の秘密。ただ国税当局が金持ち
優遇とも言える相続税対策をいつまでも認めてくれるかどうかは危惧している」と、不動産の相続
問題に詳しい税理士は話す。国交省幹部も「資産評価の見直しという話はまだ聞いていない。
価値割合方式がある程度普及してからではないか」と課税強化を否定しない。
超高層マンションは、最上層階と下層階では価格が4~5倍違う物件も珍しくない。当然、所得
階層も大きく異なり、格差のある居住者が同じマンションの住民として合意形成を図るのは無理
があるとの声を聞く。管理費・修繕積立金の金額も基本的に専有面積割合なので、高所得の
居住者には問題ない金額でも、低所得の居住者には負担が重く、滞納問題が生じやすい原因
とも言われる。もし大規模修繕工事で追加費用が必要になったとしても合意形成は容易でな