■米国人からも疑問視された貧困率と生活保護利用率のギャップ
「日本の生活保護受給者って、ずいぶん少ないんですね」というコメントを発した女性は、続いて、
貧困率と保護率を比較したグラフを指さし、 「貧困率は高いのに?」と質問した。続く会話は、
「ええ、生活保護の利用率(捕捉率)が低いんです」
「なぜ?」
「政府が、生活保護の利用を抑制したいからです」
「でも、公的な制度でしょう? 国民に周知されてないの?」
「国が全く積極的でないので、弁護士団体が周知する努力をして、申請を支援しています」
となった。頭の中に「?」が飛び回っているような表情をしている相手に、
「このことは国連でも改善が勧告されています」と述べたところ、何となく納得してもらって、
別のディスカッションに移ったような記憶がある。
また、生活扶助相当CPIそのものに関する批判コメントも数多くいただいた。ある男性は、
「そういう恣意的な基準決定をチェックする公的機関は、日本にはないんですか?」と質問してきた。
残念ながら存在しない。直接被害を受けた生活保護利用者本人による違憲訴訟が、公的なチェックへと
持ち込むための唯一の手段である。
さきほどとは別の女性は、「生活保護受給者を孤立させたり、厚労省に基準部会委員の専門知の
『ツマミ食い』を許す社会構造を変える可能性はないの?」と質問してきた。
私は、「特に昨年から、子どもの貧困に対する国民的関心が高まっています。解決するための社会的活動も、
あちこちで活発に行われ、ネットワーク化されています。多くの人々の関心が、社会の風土や構造に
風穴を開ける可能性はあると考えています」と答えた。
日本人にとっても理解しにくく説明が困難な問題の数々を、下手な英語でしどろもどろになりながら説明しつつの
ディスカッションではあったが、来場者は概ね、納得し、満足し「今後に期待します、国際比較もしてくださいね」
「日本の良い成り行きを願っています」とコメントし、握手して去っていった。日本人のうち3名も、同様の反応であった。
http://diamond.jp/articles/-/69506