飛翔能力の獲得という革新的進化が鍵となり、昆虫はすさまじい多様化を遂げることができた。にもかかわらず、多くの種を内包する有翅昆虫グループには飛翔能力を持たない系統が存在する。そのような系統では、飛翔能力の退化に起因する低い分散力が異所的分化を促進し、結果として、種分化速度が高まると思われる。今回我々は、飛翔能力の退化が異所的種分化を促進することを、シデムシ(鞘翅目シデムシ科)を用いて示した。我々は、飛べない種では飛べる種よりも集団間に高い遺伝的差異がみられ、遺伝的に区別できる系統数がより多いこと、飛翔を退化させた系統の種分化速度が飛翔を保持している系統の種分化速度の二倍であることを示した。さらに、15科51種の甲虫を用いたメタ解析により、飛べない種の集団間の遺伝的差異が、飛べる種と比較して高いことを明らかにした。これまでに記載された生物種のおよそ1/4を占める甲虫類では、飛翔能力の退化が繰り返し生じたことで、中生代からの継続的な種多様化が維持されてきたと思われる。
以下ソース
http://www.natureasia.com/ja-jp/ncomms/articles/ncomms1659