フランスの政治:マリーヌ・ルペンの台頭を阻止せよ
(英エコノミスト誌 2015年3月14日号)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43237
フランスの主流派政党は極右政党・国民戦線に対抗するために、もっと多くのことをしなければならない。
フランスの極右政党・国民戦線(FN)の当時の党首、ジャン・マリー・ルペンが2002年の大統領選挙で
決選投票に進み、世界に衝撃を与えてから、ほぼ13年経った。
現在、娘のマリーヌが率いているFNは、昨年の欧州議会選挙でフランス第1党に躍り出た。3月22日に
行われる地方選挙の第1回投票でも、FNは恐らく30%程度の票を獲得し、第1党になると見られている。
2002年当時、父親のルペン氏はあまりに広く嫌われていたため、左派と右派がジャック・シラクの下に
結集し、同氏が決選投票を楽に制した。対照的に、現在、そのような共同戦線は存在しない。それどころ
か、主流派の政治家は公然と、マリーヌ・ルペン氏が2017年の大統領選挙で決選投票に進むこと――
そして、ひょっとしたら勝利すること――について憶測を飛ばしている。
マリーヌ・ルペン氏は父親よりも魅力のある政治指導者だ。FNのブランドから毒素を取り除くために、
かつてFNが具現化していたネオファシズム、人種差別主義、反ユダヤ主義をかなり払拭した。党の基盤
強化に熱心に取り組んでおり、その結果、FNはより多くの有権者を取り込んでいるだけでなく、より多くの
党員と政治的な経験を積み上げている。
(中略)
これは極めて憂慮すべきことだ。どれほどイメージを和らげても、FNは今なお過激主義政党だ。FNは
猛烈な反移民政党だ。あからさまな反ユダヤ主義はトーンダウンされたが、党の排外主義はイスラム
主義への警告というテーマの下で続いている。これが今年1月に起きた週刊紙シャルリエブドでの殺害
事件の後にFNが勢力を伸ばし続けている理由の1つだ。
FNの間違った経済政策は今も同党の極右の原点を彷彿させる。この党は反移民なだけでなく、
反グローバル化も掲げている。自由貿易と自由市場に反対し、強烈な保護主義の性質を見せている。
ルペン氏はフランスのユーロ参加を痛烈に批判し、欧州単一市場の中核を成すモノ、サービス、資本、
労働者の移動の自由に敵意を示している。
ルペン氏は反米で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を賞賛し、プーチン氏によるクリミア併合と
ウクライナ国内での行動を支持している。FNがクレムリンと関係のあるロシアの銀行から多額の融資を
受けたのは、偶然ではない。
(続く)