国の経済力である国内総生産(GDP)の民間予測が大きく外れる状況が続いている。平成26年7~9月期のGDP速報値は民間が実質年率で2%程度の増加と見込んだにも関わらず、結果は全く逆の1.6%の減少。1カ月後の改定値では民間の上方修正予想に反し、結果は1.9%減への下方修正となり、またも大きく乖離(かいり)した。2月16日に発表された26年10~12月期のGDP速報値も民間予測が3%台半ば~後半の増加にも関わらず、実際は2.2%増にとどまった。こうした読み誤りが続く背景には、GDP統計特有の問題もありそうだ。
また外れたか
「結果的にはまた外れた形ですね」。平成26年10~12月期GDP速報値について実質年率で3%台半ばと予想をしたあるエコノミストは内閣府の公表後、こうつぶやいた。
ほぼ全てのエコノミストが共通して、GDP予測の問題として挙げるのが民間在庫の扱いだ。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは、「民間在庫は詳細な内訳も公表されておらず、事後検証も不可能でまさに“ブラックボックス”」と事前予測が抱える限界の1つを指摘する。
ただ、今後景気が良くなることを見越して在庫を増やした場合でも、また景気が悪くなって在庫が積み上がっていようとも、内訳が公表されていないため、在庫の増加という事実だけで扱われる。平成26年7~9月期のGDP統計で民間予測が速報値、改定値ともに内閣府の発表と大きく数字を取り違えたのは、この在庫の予測が外れたためだ。17年ぶりの消費税増税という特殊な環境の中で、在庫の急激な増加と調整を読み切れなかったことが原因となっている。
一方、10~12月期は個人消費や設備投資の予測が大きく異なったことが主な要因だ。ただ、宮前氏は「エコノミスト個人や3人程度のチームで予測するのに対して、政府は項目も細かく数十人で分析しているというマンパワーの問題もある」と弁明する。
予測の精度を高めて、投資家らの信頼に応えるためエコノミストの試行錯誤は続いている。
政府予想も大きく外れる
消費税増税後の民間予測が大きく外れたことばかりが注目されているが、平成26年度のGDP成長率について言えば、官庁エコノミストといわれる内閣府の専門家が作成する政府の経済見通しも下方修正を繰り返し、結果的には甘さが浮き彫りになった。
「計算方法の詳細は国家機密にあたり、他国も秘密にしており公開はできない」(内閣府幹部)のは仕方がないとしても、官民ともに的確な見通しを公表することが求められそうだ。
抜粋
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1503/08/news005.html